最新記事

イラク

モスル西部奪回作戦、イラク軍は地獄の市街戦へ

2017年3月2日(木)11時00分
ポール・マクリーリー

モスル南部の空港を制圧したイラクの警察部隊 Zohra Bensemra-REUTERS

<ISISのイラク最大の拠点モスルの奪回にイラク軍が成功すれば、ISISはイラクの拠点都市をすべて失うことになる>

イラク軍は先週、テロ組織ISIS(自称イスラム国)のイラク最大の拠点モスル西部に進攻を始めた。米軍主導の有志連合当局者によると、戦闘初日にかなりの成果を上げたもようだ。

イラク軍と警察部隊は3方面からISISを同時攻撃。米軍の訓練を受けた対テロ精鋭部隊は、重武装の第14師団と連携して西側から進攻した。警察部隊は日没までに南部の空港を制圧(トップの写真)。米仏両国は空爆で作戦を支援した。

首都バグダッドでのテロ続発や汚職問題で反対派から非難されているアバディ首相にとって、この作戦は最優先課題だ。モスル奪回に成功すれば、ISISはイラクの拠点都市をすべて失うことになる。アバディは先週、ティラーソン米国務長官と電話会談。支援の確約を得たという。

【参考記事】トランプ政権の中東敵視政策に、日本が果たせる役割

この作戦の背景には、1月に奪還したモスル東部での苦い教訓がある。ジョセフ・ボテル米中央軍司令官によれば、イラク軍は東部奪還までの3カ月間に約3500人の死傷者を出した。その二の舞いを避けるため、今回は3方面から攻撃を仕掛けて敵の混乱を誘い、1つの前線に戦力を集中できないようにした。

ISISは「イラク軍の作戦に対し、効果的に反応できなかった」と、有志連合のヒュー・マカスラン副司令官(ニュージーランド)は指摘する。イラク軍は戦闘初日で有志連合の事前予想より前方に進めたという。

だが、この先は狭い路地が多いモスル西部での厳しい市街戦が待っている。14年からISISが支配するモスルには、今も75万人の民間人がいる。市内に残るISIS戦闘員は4000~6000人ともいわれ、大量の簡易爆弾が設置されている。

イラク政府当局者は、今後も有志連合の協力が欠かせないと強調する。イラク内務省の報道官は、「この先数年」は軍事的支援が必要だと語った。

[2017年3月7日号掲載]

From Foreign Policy Magazine

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

日本製鉄副会長が来週訪米、USスチール買収で働きか

ワールド

北朝鮮の金総書記、核戦力増強を指示 戦術誘導弾の実

ビジネス

アングル:中国の住宅買い換えキャンペーン、中古物件

ワールド

アフガン中部で銃撃、外国人ら4人死亡 3人はスペイ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた異常」...「極めて重要な発見」とは?

  • 3

    存在するはずのない系外惑星「ハルラ」をめぐる謎、さらに深まる

  • 4

    「円安を憂う声」は早晩消えていく

  • 5

    中国のホテルで「麻酔」を打たれ、体を「ギプスで固…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    無名コメディアンによる狂気ドラマ『私のトナカイち…

  • 8

    他人から非難された...そんな時「釈迦牟尼の出した答…

  • 9

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 10

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 6

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 7

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 8

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 9

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中