最新記事

インドネシア

ジャカルタで圧力鍋使用の自爆テロ  不安と衝撃の中で断食月近づく

2017年5月25日(木)19時30分
大塚智彦(PanAsiaNews)

自爆テロがあったバス停付近の現場を確保する警察官(5月24日、ジャカルタ東部カンプン・マラユ地区) Sigid Kurniawan/REUTERS

<キリスト教祭日の前夜に、男2人が自爆テロ。2日後のイスラム教の断食(プアサ)へ向けて緊迫した捜査が続く>

インドネシアの首都ジャカルタ東部で24日夜、2度の爆発があり警察官3人が死亡、市民ら10人が重軽傷を負う事件が起きた。国家警察は目撃者の情報や現場の状況から、2人の男性がそれぞれ自爆した自爆テロ事件と断定、実行犯の身元と背後関係を鋭意捜査している。

自爆テロがあったのは、ジャカルタ東部カンプン・マラユ地区の公共バス停車場付近、24日午後9時から9時5分にかけて、停車場のトイレ付近と隣接するバイクの駐車場で相次いで爆発音が鳴り響き、煙が上がった。

現場では27日から始まると見込まれるイスラム教の断食(プアサ)を前にイスラム教徒らによる祭りの行進が行われており、その沿道警備にあたっていた警察官3人が巻き添えで死亡、警察官5人とバイクタクシー運転手、露天商など5人の一般市民が負傷して近くの病院で手当てを受けている。

中部ジャカルタのスラカルタに滞在していたジョコ・ウィドド大統領は25日夜にはジャカルタに戻り、犠牲者の家族や入院中の負傷者と面会する。

ジョコ大統領は自爆テロの発生を受けて「深い悲しみと憤りを覚える。特に職務遂行中に殉じた警察官には敬意と弔意を表する」とのコメントを発表した。

【参考記事】インドネシアのイスラム教徒数万人がデモ ジャカルタ知事の辞任を要求

爆弾は圧力釜使用か

国家警察と対テロ捜査隊によると、2人の自爆犯の遺体はバラバラになったものの頭部が残されており「身元特定は可能」としている。また一人の男性の衣服のポケットから圧力釜を購入したレシートが発見されたという。

レシートには5月22日にジャカルタ西部のパダララングにあるコンビニエンスストア「ミニマーケット」で圧力釜を購入した記録が残っている。このため2人は圧力釜を利用した手製爆弾を爆発させて自爆したとの見方を強めている。

警察関係者によると「圧力釜爆弾」は2017年2月27日に西ジャワ州の州都バンドンにある政府関係庁舎で起きた爆弾事件で使用されており、この時の犯人との関連性を捜査しているという。

バンドンでの爆弾テロでは庁舎内の中庭に置かれた爆弾が爆発したもので犠牲者は出なかったが、実行犯が警備中の警察官に撃たれて負傷、逮捕されている。

この時の実行犯は警察の対テロ部隊に逮捕された仲間の解放要求が動機とされ、2016年1月に起きたジャカルタ中心部でのテロ事件(実行犯4人、市民4人が死亡)に繋がるイスラム教テログループとの関連が指摘されていた。

このため今回の自爆テロ実行犯も同じグループに結びつく可能性があり、捜査当局は慎重に捜査を進めている。これまでのところ今回の自爆テロ事件の犯行声明は出されていない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=最高値更新、CPI受け利下げ期待高ま

ビジネス

米シスコ、5─7月期売上高見通し予想上回る AI支

ワールド

ニューカレドニアに非常事態宣言、暴動の死者4人に 

ワールド

再送-EU、ジョージアに「スパイ法案」撤回要請 「
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 2

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史も「韻」を踏む

  • 3

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダブルの「大合唱」

  • 4

    それでもインドは中国に勝てない...国内企業の投資意…

  • 5

    マーク・ザッカーバーグ氏インタビュー「なぜAIを無…

  • 6

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 7

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 8

    奇跡の成長に取り残された、韓国「貧困高齢者」の苦悩

  • 9

    総額100万円ほどの負担増...国民年金の納付「5年延長…

  • 10

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 4

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 7

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中