最新記事

調査結果

一生に一度は誰もが精神を病むことが明らかに 健康な方がむしろ「異常」!?

2017年7月28日(金)15時40分
松丸さとみ

その代わり2つの特徴があった。1つは、家系の中で精神疾患を経験した人がほとんどいなかったこと。もう1つは、研究チームが「有益な性格」と表現しているものだ。研究者2人が寄稿した前述のサイエンティフィック・アメリカンの記事によると、それはつまり、「ネガティブな感情をほとんど見せない」、「同僚や仲間と付き合うのがうまい」、「自己統制に長けている」ということだという。

両氏はさらに、こうした精神疾患を発症したことがない人たちは、なぜ「異常なほど」精神が健康なのかを探る研究対象になるだろうとしている。

みんな辛いなら人にもっとやさしくなれるかも?

研究チームの1人でニュージーランドのオタゴ大学のジョン・ホーウッド准教授は、心理的な疾病というと一生ものだと考える傾向があると指摘。しかし実際はほとんどの場合で、一時的なものだという(なおホーウッド准教授の別の研究では、85%の人が中年期までに診断名のつく心の病気を経験するという結果が出ている)。

サイエンティフィック・アメリカンに寄稿した2人の研究者は、今回の調査で一番大切なのは、「精神面での問題はほとんど普遍的」であり、つまり「社会は心の病気を、骨折や腎臓結石、風邪などのように、生きていく中で起こる通常の傷みとして扱うべきだ」と訴えている。

また、米クレアモント大学院のジェイソン・シーゲル教授の言葉「友達や同僚の健康問題が一時的なものと考える時に、人はより同情的で協力的になる」を引用し、今回のような調査結果が、「自分自身や大切な人たちが人生を歩む過程でつらい状況に差し掛かった時に、その人たちにもっとやさしくなれる手助けになる」と結んでいる。

【参考記事】死が迫ると人は幸福を感じる?--米研究
【参考記事】ヘンリー王子が心の問題を告白 その背景にあるものとは

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガリニューアル!
 ご登録(無料)はこちらから=>>

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

英サービスPMI4月改定値、約1年ぶり高水準 成長

ワールド

ノルウェー中銀、金利据え置き 引き締め長期化の可能

ワールド

トルコCPI、4月は前年比+69.8% 22年以来

ビジネス

ドル/円、一時152.75円 週初から3%超の円高
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 4

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 5

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 6

    「TSMC創業者」モリス・チャンが、IBM工場の買収を視…

  • 7

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 8

    中国のコモディティ爆買い続く、 最終兵器「人民元切…

  • 9

    「複雑で自由で多様」...日本アニメがこれからも世界…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 8

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 9

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 10

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中