最新記事

ミサイル防衛

中国が「安倍は北の挑発を口実に軍拡」と批判

2017年8月18日(金)20時30分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

中国の中央テレビCCTVは「安倍は北朝鮮のグアムを狙ったミサイル発射挑発を口実にPAC3を無駄に配備して国内世論を煽り、軍拡目標を達成しようとしている」と批判した。事実歪曲であり、今後の日本防衛のために実態を分析する。

CCTVによる安倍政権批判

中国共産党が管轄する中央テレビ局CCTVは、くり返し米朝舌戦と安倍政権の「軍拡戦略」を結びつけた報道をしてきた。

北朝鮮がアメリカ領のグアム海域に弾道ミサイルを発射する計画があるという情報を受けて、8月10日の衆議院安全保障委員会で小野寺防衛相が、北朝鮮がグアムを攻撃した場合、「(日米同盟のある)日本が集団的自衛権を行使できる"存立危機事態"に当たれば迎撃できる」と認識していると答弁した。CCTVはその動画を流しながら、地上配備型迎撃ミサイルPAC3(地対空誘導弾パトリオットミサイル)が、島根県、広島県、愛媛県、高知県などの駐屯地にそれぞれ到着したことも含めて、実に詳細に逐一報道してきた。

ここまでは基本的には客観的情報であり、小野寺氏の答弁は一般論としては妥当なものなので、特に大きな問題はない。

問題なのは、CCTVの特別解決委員が現れて、これが「安倍政権が進める軍拡の目的達成に寄与している」と、必ず解説することである。

解説委員の論理はこうだ。

――PAC3はミサイルが着弾する最終段階で用いる迎撃ミサイルだ。北朝鮮からグアムまで飛行してグアム近海に着弾する場合、PAC3 はグアム近郊に配備されていなければ、いかなる効果を発揮することもできない。日本の上空では、大気圏外をただ通過するだけだ。PAC3の射程はたかだか20キロ。そのような無駄なものを配備し、それを日本のニュースで大々的に報道するのは、北朝鮮危機に便乗して日本人の危機意識を煽り、いかに日本が軍拡する必要があるかという逼迫感を日本の国民に植え付けて、憲法改正の必要性を説き、軍拡を達成しようと目論んでいる証拠だ。

こういう論理構造になっているが、肝心な一言が抜けている。

日本がPAC3を配備した背景

注意深く日本のニュースを観察すれば、小野寺五典防衛相はあくまでも、「北朝鮮のミサイルがグアムに向けたコースを外れて誤って日本に落ちてきた場合を想定して」、PAC3を中国・四国地方の計4カ所の陸上自衛隊の駐屯地に展開する破壊措置命令を出したと言っている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏が不倫口止め料支払いを個人的に指示、元顧

ビジネス

ミーム株急騰、火付け役が3年ぶり投稿再開 ゲームス

ビジネス

米国株式市場=S&P横ばい、インフレ指標や企業決算

ワールド

メリンダ・ゲイツ氏、慈善団体共同議長退任へ 名称「
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少子化の本当の理由【アニメで解説】

  • 3

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 4

    年金だけに頼ると貧困ライン未満の生活に...進む少子…

  • 5

    「ゼレンスキー暗殺計画」はプーチンへの「贈り物」…

  • 6

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 7

    「人の臓器を揚げて食らう」人肉食受刑者らによる最…

  • 8

    ブラッドレー歩兵戦闘車、ロシアT80戦車を撃ち抜く「…

  • 9

    自宅のリフォーム中、床下でショッキングな発見をし…

  • 10

    地下室の排水口の中に、無数の触手を蠢かせる「謎の…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 4

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 5

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 6

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 7

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 8

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 9

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 10

    「終わりよければ全てよし」...日本の「締めくくりの…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中