最新記事

イスラム教

イスラム女性に性の指南書

2017年8月30日(水)16時30分
ライアン・ボート

この本が目指すのは夫婦が力を合わせて実現する豊かな性生活 Alessandro Zunino-Moment/GETTY IMAGES

<イスラム教徒の女性向けの、セックスをめぐる意識改革を目指す本が話題に>

イスラム教においては、寝室での大胆な振る舞いは必ずしも奨励されていない。特に女性にとってはそうだ。イスラム文化では、女性はセックスに罪悪感を覚えることや性に対して受け身の態度を取ることが求められる。その結果、男性中心のセックスになり、夫婦が互いに性的な喜びを与え合う関係を構築できないことも珍しくない。

『イスラム教徒の性のマニュアル──イスラムの教えに基づく、めくるめくセックスへの手引』は、アメリカ生まれのイスラム教徒女性がそんな性に対する意識を改革することを目指して書いた本だ。行為中にどんなことを言えばいいかや性器の衛生の保ち方など、イスラム教徒の夫婦が健康で豊かな性的関係を築くための多様なアドバイスが盛り込まれている。

著者のウム・ムラダート(身元を隠すためペンネームを使用)は英ガーディアン紙の取材に対し、「私はセックスの相手を配偶者に限ること、そして配偶者を相手にあらゆる性的経験をしてみることの重要性を説いた」と述べている。「イスラム教では婚姻の枠内で肉体関係を楽しむことも大切とされている。夫から性的な満足を与えられることは妻の権利だ」

【参考記事】性的欲望をかきたてるものは人によってこんなに違う

結婚後間もない友人から性生活の悩みを聞いたことが執筆のきっかけになったと、ムラダートは自らのウェブサイトで語っている。「彼女は体がどうなるかという構造は分かっていたけれど、ベッドの中で夫に大事にしてもらうすべは知らなかった。夫がどうすると喜ぶかも知らなかった。自分がどうされるとうれしいかさえも!」

そこでムラダートはこの友人に充実した性生活を送る方法を指南することにした。「口頭で教えたことをワード文書に書き起こして電子メールで彼女に送った」ところ、文書は友人のそのまた友人たちへと拡散。やがて「このテーマで本を書いてほしいという人々の声が漏れ伝わってきた」という。

7月上旬の出版以来、複数のイスラム教徒女性団体から称賛の声が上がっているほか、イスラム教徒男性の関心も集まっている。「妻をベッドで喜ばせる方法について指南書を書く予定はないかと問い合わせる男性からの電子メール」が著者の元には何十通も届いているそうだ。

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガリニューアル!
 ご登録(無料)はこちらから=>>

[2017年8月29日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米アトランタ連銀総裁、インフレ進展停滞なら利上げに

ワールド

多国間開発銀の改革計画、10月G20会合で議論=ブ

ビジネス

ソニー、米パラマウント買収交渉に参加か アポロと協

ビジネス

ネットフリックス、1─3月加入者が大幅増 売上高見
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の衝撃...米女優の過激衣装に「冗談でもあり得ない」と怒りの声

  • 3

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離れ」外貨準備のうち、金が約4%を占める

  • 4

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 5

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 6

    「イスラエルに300発撃って戦果はほぼゼロ」をイラン…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 9

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 10

    ヨルダン王女、イランの無人機5機を撃墜して人類への…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体は

  • 4

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 5

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 9

    帰宅した女性が目撃したのは、ヘビが「愛猫」の首を…

  • 10

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中