最新記事

プロダクツ

世界のトップブランドが注目 プロダクトデザインをリードする深澤直人

2017年9月10日(日)13時55分
坂本 裕子 ※Pen Onlineより転載

ケトルとティーポットの両使いできる「Cha」シリーズから生まれたクリーマー。美しい流線型のフォルムがステンレス仕上げなのに温かさを感じさせます。 「Cha クリーマー」 ALESSI 2015年 アレッシィショップ青山蔵

ALESSI、ARTEMIDE、B&B ITALIA、BOFFI、DANESE、MAGIS、BELUX、LAMY、THONET、HERMAN MILLERなどの世界的ブランドから、無印良品、マルニ木工まで。プロダクトデザインやコンサルティングを手がけ、国を超えて活躍するデザイナー、深澤直人。ご存じない方でも、デザインケータイのブームを起こし、後のスマートフォンにもつながったau(KDDI)の携帯電話「INFOBAR」シリーズの、シンプルながら大胆で美しいデザインは覚えているのではないでしょうか?

彼の国内初の個展「AMBIENT 深澤直人がデザインする生活の周囲展」が、パナソニック 汐留ミュージアムで開催中です。電子精密機械から文具、家具、インテリア、家電など、多岐にわたる作品から選りすぐりで魅せる内容は、彼のプロダクトを一望し、創作のエッセンスを体感できるつくりになっています。

ambient-panasonic_MXMiE4M.jpg

全体が均一に光る「光の球」を実現した照明。会場で黒い壁に光るライトの
美しさは、この美術館での展覧会にふさわしいプロローグです。 「モディ
ファイ スフィア」 パナソニック株式会社 2012年

展覧会タイトル「AMBIENT」は「環境」を意味しますが、深澤はそこに「周囲」や「雰囲気」の含みを持たせます。彼が、常に使う人の存在と「もの」が置かれる空間を基本に置き、「もの」と空間が相互に作用して「いい雰囲気」が生まれることを考えてデザインしているからです。そうして彼のデザインした「もの」たちは、生活の中で使用され、置かれることで、周囲の空間もデザインしていくのです。

会場は、展示室を居住空間に見立て、彼の作品があたかも誰かの家を訪ねているかのように配置され、深澤の思想を立体化しています。玄関の照明に迎えられ、独りくつろぐ書斎をのぞき、機能美が際立つキッチンから、スマートで温かい雰囲気の居間へ。さらには身に着ける道具の棚を楽しみ、使いやすさと気持ちよさが一体化したバスルームや、思い思いの椅子に座って遊べるテラスや中庭まで。

ambient-panasonic_JwFiNZE.jpg

大きな木からくり抜かれたようなアームチェアは、その曲線をなぞり、座ってみたくなります。どんな空間にもあつらえたようにしっくりとおさまる魅力は、考え抜かれたフォルムと素材にあるのかもしれません。 左:「HIROSHIMA アームチェア」 マルニ木工 2008年 株式会社マルニ木工蔵 / 右:展示風景

ambient-panasonic_JpBYUBA.jpg

「彫刻の置物のようにしたかった」というサイドテーブルは、きのこのような有機的なやわらかさと、テーブルという家具であることを両立させ、さりげなく同時に確かな存在感で空間を飾りながら機能しています。 左:「AWA」 B&B ITALIA 2009年 NAOTO FUKASAWA DESIGN蔵 / 右:展示風景

ambient-panasonic_JZWWJTA.jpg

数字を12角形のガラス盤に換えたウォッチと握りやすさでおにぎりのような断面になったペン。機能とシンプル美の究極の形です。 左: 「ISSEY MIYAKE TWELVE NYOP001」 セイコーウオッチ株式会社 2015年 セイコーウオッチ株式会社蔵 / 右:「NOTO」 LAMY 2008年 NAOTO FUKASAWA DESIGN蔵

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

バイデン氏陣営、選挙戦でTikTok使用継続する方

ワールド

スペイン首相が辞任の可能性示唆、妻の汚職疑惑巡り裁

ビジネス

米国株式市場=まちまち、好業績に期待 利回り上昇は

ビジネス

フォード、第2四半期利益が予想上回る ハイブリッド
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 3

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗衣氏への名誉棄損に対する賠償命令

  • 4

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 5

    マイナス金利の解除でも、円安が止まらない「当然」…

  • 6

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 7

    ケイティ・ペリーの「尻がまる見え」ドレスに批判殺…

  • 8

    ワニが16歳少年を襲い殺害...遺体発見の「おぞましい…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    イランのイスラエル攻撃でアラブ諸国がまさかのイス…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 8

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中