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ドラマ『ロング・ロード・ホーム』から見える戦争のリアル

モーリー・ロバートソン:北朝鮮を巡る未来を暗示する「米史上最悪の救出作戦」

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2017年11月7日(火)13時00分
写真:宇田川 淳 文:西田嘉孝

<イラク戦争の重要な転機となった武力衝突事件「ブラックサンデー」の全貌を、ナショナル ジオグラフィックが総力を挙げて描くドラマシリーズ「ロング・ロード・ホーム」。日本での放送開始に先駆けて、イラク戦争の知られざる裏側や同ドラマについて、有識者が語るインタビューシリーズ>


▶︎ドラマ『ロング・ロード・ホーム』から見える戦争のリアル
▶︎高橋和夫:「米史上最悪の救出作戦」の起きたイラク戦争が、ISと北朝鮮の脅威を生んだ

──本作「ロング・ロード・ホーム」は、イラク戦争が泥沼化する端緒となったブラックサンデー事件が題材。イラク戦争がアメリカ社会にもたらしたのはどのような変化だったのだろうか?

アメリカのイラクへの侵攻は後に「最悪の判断」として歴史に裁かれたわけですが、ブッシュ政権がイラク侵攻を決めた当時は、多くのアメリカ人が持つ「自分たちは正しい」という信念がぐらつくギリギリのタイミングだったと思います。

今になって冷静に当時のニュースや中東情勢を振り返れば、サダム・フセインに干渉しないという選択も大いにあった。でも、当時のアメリカの世論としては9.11があったから戦うしかないと。あの頃はまだソーシャルメディアも発展していないし、セカンドオピニオンもない。そうした状況で、国民はアメリカの正義という、見たいものだけを見ていた時代だったと思うんです。

ところが、あっけなくフセイン政権が倒れてイラクを解放したと思ったら、地元の人は喜ぶどころかゲリラ戦で抵抗される。今回の「ロング・ロード・ホーム」でも描かれているように、アメリカの正義がまったく通用しない世界や、その裏側にあるリアルをアメリカ国民が突きつけられたのが、まさにイラク戦争だったのではないでしょうか。

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© National Geographic. ALL RIGHTS RESERVED.

──つまり「国民ぐるみで見たいものを見ていた時代」が終焉する契機がイラク戦争だった?

そうですね。たとえば90年代には、ニューヨークが大規模テロの標的になるといったハリウッド映画が制作され、そうした作品を人々は純粋なエンターテインメントとして楽しんでいました。ところが2001年にアメリカ同時多発テロが起きた瞬間に、そうしたフィクションがリアルに追い抜かれてしまった。

そうすると、誰もリアルにアメリカが傷つくような映画は観たくないし、ハリウッドではスーパーマンのような不死身のヒーローを描く映画がどんどん増えていく。そうしたなかで、アメリカ人がある種の"癒やし"を得たのがドラマシリーズの「24」でした。

「24」では黒人大統領が登場し、テロリストに射殺されてしまう。敵の視点からの描写があったり、そうした非常事態にアメリカはどうなるのかを垣間見せたり。いわば、従来はタブーだった「アメリカ人が見たくない真実をフィクションの形で伝える」という、新しいドラマのジャンルを確立した。そして多くのアメリカ人は「24」を観て、痛みを感じながらも同時に"癒やし"を得ていたのだと思うんです。

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