最新記事

環境問題

中国養豚業に激震、環境対策強化で閉鎖=廃業を迫られる農家

2017年11月10日(金)13時40分

11月5日、北京近郊で養豚場を営んでいたZhang Faqingさんは、わずか2週間後に養豚場を閉鎖するよう命令する手紙が昨年12月に政府から届いた時、何かの冗談だと思った。写真は北京近郊の養豚場で2012年9月撮影(2017年 ロイター/David Gray)

北京近郊で養豚場を営んでいたZhang Faqingさん(47)は、わずか2週間後に養豚場を閉鎖するよう命令する手紙が昨年12月に政府から届いた時、何かの冗談だと思った。

だがその数日後、地元の役場の職員が命令を再度伝達しにやって来たため、Zhangさんは事態が笑いごとではないと気付いた。

それから1年近くが経過したが、Zhangさんは政府が約束した数百万元の補償金をいまだに受け取っていない。1万5000頭以上の豚を飼育していた10棟超の豚舎は空っぽのままで、Zhangさんは途方に暮れている。

「業者の言い値で売るしかなかったので、キャベツの値段で肉を売った。大損害だ」と、Zhangさんは語った。損害額は7000万元(約12億円)以上になるという。

中国政府は、世界最大の畜産業をクリーン化する3カ年計画を推進しており、Zhangさんのように養豚場や養鶏場を強制的に閉鎖させられた小規模畜産農家の数は、中国全土で数十万軒に上る。

中国農業省は、この記事に関してコメントしなかった。

12月31日の期日までに新たに強化された基準を順守することが求められており、当局による査察や強制閉鎖の件数が増えている。

その影響で、需要が最大になる2月の旧正月に向けて中国で最も好まれている豚肉の供給が一時的に絞られるのではないかとの懸念から、豚肉価格は6月以降16%上昇した。

計11億頭もの豚を飼育する中国の養豚業は、長期的には、小規模農家を締め出し、大規模農場を強化する中国政府の政策により一新されることになる。中国は、近代的で効率的な農業を推進している。

飼育頭数50頭未満の家族経営の農家は、中国の養豚農家の9割を占めるが、生産量は総供給量の3分の1にとどまる。

政府の方針を受け、数百万頭規模のメガ養豚場をそれぞれ建設中の広東温氏食品集団<300498.SZ>や新希望六和<000876.SZ>などの大企業が、70億元(約1200億円)規模の豚肉市場でシェアを伸ばすことが確実だ。

「中国の養豚業は、市場を牛耳る大企業同士が競争を繰り広げる準独占市場的な構造に次第になっていくだろう」と、中国農業科学院のZhu Zengyong研究員は予測する。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国主席「中米はパートナーであるべき」、米国務長官

ビジネス

中国、自動車下取りに補助金 需要喚起へ

ビジネス

円安、物価上昇通じて賃金に波及するリスクに警戒感=

ビジネス

ユーロ圏の銀行融資低迷、インフレ期待低下 利下げの
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 3

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 4

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP…

  • 5

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 6

    未婚中高年男性の死亡率は、既婚男性の2.8倍も高い

  • 7

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 8

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこ…

  • 8

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 9

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中