最新記事

テクノロジー

音声認識の仁義なき戦いが始まった

2017年12月20日(水)16時00分
ウィル・オリマス

しかしグーグルに言わせれば先に手を出したのはアマゾンだ。「消費者が両社の製品とサービスを自由に利用できるよう協議してきたが、アマゾンは当社製品クロームキャストやグーグル・ホームを扱わず、グーグルキャストの利用者には(アマゾンの)プライム・ビデオを見られなくし、当社系列のネスト社製品の扱いも一部停止した。これでは互恵関係を築けない」

この件についてアマゾンに問い合わせても、回答はなし。消費者の利益より、ライバルとの縄張り争いが大事なのだろう。

ネット通販最大手で端末やソフト、コンテンツの分野にも進出したいアマゾンは、自社サイトでグーグル製品を排除。対抗上、ネット検索最大手で端末やソフト、コンテンツを強化したいグーグルも自社コンテンツをアマゾン製品から遮断した。そういう構図だ。

先行2社による泥仕合

仁義なき縄張り争いと言うほかないが、いかに競争の激しい業界とはいえ、ここまでやるのは尋常ではない。どうやら問題は、どこのサイトで何が買える、どこのデバイスで何が見られるという程度の話ではないらしい。こんなことをしていればどちらの企業イメージも下がるだろうし、躍進著しい動画配信サービスのネットフリックスや、何よりもアップルを利することになりかねない。それでも意地を張り合うのはなぜか。

それは音声認識という新たな市場の覇権をめぐる戦争が勃発寸前だからだ。音声認識のプラットフォームには、今のところアマゾンのアレクサ、グーグルのアシスタント、アップルのSiri(シリ)、マイクロソフトのコルタナがある。ただしアップルとマイクロソフトはまだ端末を発売していない。

端末で先行しているのはアマゾン・エコーと、これに続いたグーグル・ホームだ。先陣を切ったアマゾンのエコーは評判がよく、この分野で一歩リードしてきた。しかしグーグルは、いずれ自社のプラットフォームがアレクサを駆逐できると踏んでいる。なにしろAIの分野ではグーグルがどこよりも先行しているからだ。

アマゾンもそれは承知で、だからこそ自社の通販サイトを通じてアレクサ搭載製品を精力的に売りまくる一方、グーグル製品は扱わないでいる。

対するグーグルは、小売り部門でアマゾン最大のライバルであるウォルマートと組んだ。だからウォルマートの店ではグーグル・ホームを売っているが、エコーは置いていない。当然の選択である。エコーの購入者はアマゾンのサイトで買い物をするので、二度とウォルマートを利用しなくなるからだ。一方、グーグル・ホームでは遠からずウォルマートの通販サイトを利用できるようになるだろう。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

スタバ、第2四半期の既存店売上高が予想外に減少 米

ビジネス

NY外為市場=円下落、予想上回る米雇用コスト受けド

ビジネス

米国株式市場=下落、FOMCに注目

ビジネス

米アマゾン、第2四半期売上高見通し予想下回る
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 5

    衆院3補選の結果が示す日本のデモクラシーの危機

  • 6

    なぜ女性の「ボディヘア」はいまだタブーなのか?...…

  • 7

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 8

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 9

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 10

    「瞬時に痛みが走った...」ヨガ中に猛毒ヘビに襲われ…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 6

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 7

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 8

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 9

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 8

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中