最新記事

軍事

安倍政権、いずも型護衛艦の空母化検討 北朝鮮や中国海上進出に対応

2017年12月26日(火)14時48分

12月26日、2019年度から始まる新たな中期防衛力整備計画に向け、政府は「いずも」型護衛艦を戦闘機が発着できる空母に改修する検討に入った。写真は「いずも」型護衛艦。横浜で3月撮影(2017年 ロイター/Toru Hanai)

2019年度から始まる新たな中期防衛力整備計画に向け、政府は「いずも」型護衛艦を戦闘機が発着できる空母に改修する検討に入った。垂直に離着陸できる米海兵隊の「F35B」戦闘機の運用を想定するとともに、航空自衛隊が同型機を導入することも視野に入れている。

事情に詳しい複数の政府関係者が明らかにした。有事の際に日本国内の滑走路が長距離ミサイルなどで破壊され、戦闘機が使用できなくなることに備えるほか、中国が活動を強める南西諸島周辺の守りを強化する。

いずもは15年に就役した全長248メートルの海上自衛隊最大の護衛艦。空母のような広い甲板を備え、同時に9機のヘリコプターを運用できる。対潜水艦戦が主要な役割で、今年3月には2番艦の「かが」が就役した。

複数の政府関係者によると、いずもはもともとF35Bの運用を前提に設計され、格納庫と甲板をつなぐエレベーターは同機を乗せることが可能。改修では短距離滑走で離陸できるよう船首にジャンプ台を増設したり、垂直離着陸時に出る熱に耐えられるよう、甲板の耐熱性を高めること、管制機能を強化することなどを検討している。

自衛隊はこのところ、米空母との共同訓練を頻繁に行っている。北朝鮮に対する抑止力を高めることが最大の目的だが、防衛省関係者は「米軍が空母をどう運用しているのか、目の前で見ることができる絶好の機会だ」と話し、自衛隊による空母保有に前向きな姿勢を見せる。

日本は軍事力を急速に強化する中国への警戒感を強めている。特に長距離ミサイルによって有事の際、緒戦で在日米軍や自衛隊の滑走路が破壊される恐れがあるため、移動可能な発着拠点を洋上に確保しておきたい考え。東シナ海の海と空で活動を強める中国に対し、制空、制海権を確保する狙いもある。

複数の政府関係者によると、まずは米海兵隊のF35Bを発着させることを想定。平時の補給や機体整備などを通じ、日米が緊密に連携していることをアピールする。また、空自が独自にF35Bを導入し、海自と統合的に運用することも検討している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

台湾の頼次期総統、20日の就任式で中国との「現状維

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部で攻勢強化 米大統領補佐官が

ワールド

アングル:トランプ氏陣営、本選敗北に備え「異議申し

ビジネス

日本製鉄副会長が来週訪米、USスチール買収で働きか
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバいのか!?

  • 3

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイジェリアの少年」...経験した偏見と苦難、そして現在の夢

  • 4

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 5

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 6

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 7

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 8

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 9

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 10

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 9

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 10

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 4

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中