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流通業界、深刻な人手不足をAIとロボット連携で生産性改革へ

2018年1月30日(火)16時44分


流通倉庫のロボ化が急速に普及

通販の世界でも、人手不足は深刻化している。2010年以降、売り上げは6年間で1.5倍、年間8%の伸び(日本通信販売協会)となっており、国内総生産(GDP)ベースで年率1%にも満たない民間消費の伸びをはるかに上回る。

流通倉庫では、AIでシステム制御された無人搬送ロボットの導入が世界規模で広がりを見せる。米アマゾン・ドットコムが導入している米国製「KIVA」をはじめ、日本、中国、インドなど各国企業のロボットが活躍している。

ニトリホールディングス<9843.T>は、18年2月期に過去最大規模となる設備投資を実施。都心部での出店攻勢や通販の拡大で、物流施設の自動化・省力化を急ぐ。

西日本通販発送センター(大阪府茨木市)では、昨年12月にインドのロボットベンチャー、GreyOrange社の無人搬送ロボット「バトラー」が日本で初めて稼働を開始した。

「バトラー」は、商品保管用の棚を作業者の手元まで運ぶ無人搬送ロボットで、79台の導入により、作業効率が4.2倍に向上したという。また、コンテナからの商品の荷降ろしを助ける「エルデバン」も稼働を開始している。

企業向け工具通販のモノタロウ<3604.T>でも、茨城県笠間市に85億円を投入して新物流センターを構築。モノのインターネット(IoT)、AIの活用による日立製作所<6501.T>の無人搬送ロボット「ラックル」154台を17年5月に導入、1000万点の品物を取り扱う。納期短縮と在庫圧縮により生産性は従来倉庫の2倍を実現。同社広報では「アマゾンとの競合は当然念頭にある」として、さらなる効率化の追求は必至とみている。

先端IT導入3割どまり、非製造業の底上げ急務

省力化投資の動きは機械受注統計にも表れた。17年11月機械受注では、卸・小売業から異例の大型受注が入り、前年比61%増を記録。運輸業からの受注も同11.6%増と2桁の伸びとなった。運搬機械やロボットの受注は、前年の3割近い伸びとなっている。

受注側の機械メーカーでも、ファナック<6954.T>が今期3回目の業績予想の上方修正を行った。

ただ、日本企業全体におけるIoT、AI、ロボット、クラウドといった新技術の導入割合は、まだ高くない。昨年の経済白書では、こうした技術のうち1つでも導入した企業の割合は36%にとどまっていると指摘している。

日本生産性本部によれば、製造業の労働生産性は米国の7割。非製造業では米国の半分以下にとどまる。国際競争に生き残り、人手不足を乗り越えるためにも中小非製造業をはじめとする省力化・情報化武装が急務の状況だ。

(中川泉 清水律子  編集:田巻一彦)

[東京 29日 ロイター]


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