Newsweek

民族浄化

ロヒンギャ殺害を認めても懲りないミャンマー

2018年1月12日(金)18時30分
ソフィア・ロット・ペルシオ

    ミャンマー南西部のラカイン州で、焼き討ちされたロヒンギャ居住区の前に立つ国境警備隊員 Simon Lewis-REUTERS

    <殺害は認めても国軍の責任は認めていないし、事件現場近くで取材していた記者2人は起訴された>

    ミャンマー南西部のラカイン州の集団墓地で昨年12月にイスラム系少数民族ロヒンギャ10人の遺体が見つかった事件で、ミャンマー軍は1月10日、殺害への関与を認めた。軍がロヒンギャ殺害を認めるのは初めてだが、10人を民間人だとは認めなかった。

    ミャンマー軍司令部はフェイスブックへの投稿で、ロヒンギャの「テロリスト」10人が仏教徒の村人を脅したため、報復として殺害したと主張した。

    「村人と治安部隊がベンガリ(ロヒンギャの蔑称)テロリスト10人の殺害を認めたのは事実だ」と、ミャンマー軍は発表した。「交戦規定を破って殺人を犯した治安部隊員は処分する。事件は、テロリストが仏教徒の村人を脅して挑発したために起こった」

    ミャンマー軍はここ5カ月間、数十万人のロヒンギャの難民が隣国バングラデシュに逃れる結果を招いたロヒンギャ虐殺への関与を全面否定してきた。ロヒンギャとみられる武装集団が警察施設などを襲撃する事件が起きた昨年8月25日以降、治安当局は激しい弾圧を行った。

    掃討作戦の狙いはあくまで、暴徒化したベンガリの根絶だと国軍は主張している。そもそもミャンマーは、古くからこの地に住む少数民族としてのロヒンギャの存在を認めていない。ロヒンギャは1982年の国籍法でバングラデシュからの「不法移民」として国籍を剥奪されて以降、無国籍状態に置かれている。

    責任追及の意思も能力もない

    ミャンマーのロヒンギャ迫害は「民族浄化の典型例」だと、国連は9月に糾弾した。レックス・ティラーソン米国務長官も11月のミャンマー訪問後、「民族浄化に等しい」と非難した。

    「世界の多くの有力者がミャンマー政府高官に個別に接触し、ロヒンギャ迫害を否定するのは完全な過ちだと訴えている」と、人権団体フォーティファイ・ライツのマシュー・スミス最高責任者は本誌に語った。さらにスミスは、ロヒンギャ迫害に関与した全ての犯罪者の責任を問うため、国際社会がミャンマー政府への圧力を強めるよう期待していると言う。

    「現時点では、それが国際社会の果たすべき責任だ。ミャンマー政府には、犯罪者の責任を追及する意思も能力もないのが明らかだ」

    国際人権団体アムネスティ・インターナショナルの東南アジア・太平洋部代表のジェームズ・ゴメックスは、ラカイン州で発覚したロヒンギャ10人の殺害について、独立した調査の必要だと言う。「国軍が10人の殺害を認めたのは、ロヒンギャ迫害を全面否定してきた従来の方針からすれば大きな進歩だ。だがこの事件は氷山の一角に過ぎない。ロヒンギャを標的にした民族浄化の過程で他にどんな残虐行為が行われたのか、本格的な独立調査が必要だ」

    注目のキーワード

    注目のキーワード

    ニューストピックス

    本誌紹介

    特集:テロ時代の海外旅行

    本誌 最新号

    特集:テロ時代の海外旅行

    人気観光地でテロが起き、行き先選びに悩む時代── 「ゼロリスク」を求め過ぎる日本人のための海外旅行ガイド

    2018年5月 1日号  4/24発売

    人気ランキング

    • 1

      「いい加減にしないと暴動起こす」北朝鮮国民の不満が爆発寸前

    • 2

      中国市場依存のドイツが味わう「ゆでガエル」の恐怖

    • 3

      日本人は旅行が下手だ(テロ時代の海外旅行術)

    • 4

      キャサリン妃第3子懐妊で、英王位継承順位はこう変わ…

    • 5

      「何かがおかしい...」国のやり方を疑い始めた北朝鮮…

    • 6

      コンドームなんてもういらない!? 理想の男性用ピル…

    • 7

      ホルマリンを点滴された女性、死ぬ──遺体の防腐処理…

    • 8

      インド8歳少女のレイプ殺人で、少女への性的暴行を死…

    • 9

      こんなエコノミーは嫌だ! 合理的すぎる座席で、機…

    • 10

      「僕はゲイリー19歳、妻は72歳」 青年が恋に落ちた5…

    • 1

      「僕はゲイリー19歳、妻は72歳」 青年が恋に落ちた53歳上の女性とは

    • 2

      こんなエコノミーは嫌だ! 合理的すぎる座席で、機内はまるで満員電車?

    • 3

      「何かがおかしい...」国のやり方を疑い始めた北朝鮮の人々

    • 4

      「いい加減にしないと暴動起こす」北朝鮮国民の不満…

    • 5

      「ヒトラーが南米逃亡に使った」はずのナチス高性能…

    • 6

      おどろおどろしい溶岩の世界!?木星の北極の正体が…

    • 7

      「家賃は体で」、住宅難の英国で増える「スケベ大家」

    • 8

      地球外生命が存在しにくい理由が明らかに――やはり、…

    • 9

      金正恩は「裏切り」にあったか......脱北者をめぐる…

    • 10

      ジェット旅客機の死亡事故ゼロ:空の旅を安全にした…

    • 1

      日本の空港スタッフのショッキングな動画が拡散

    • 2

      ユーチューブ銃撃事件の犯人の奇妙な素顔 「ビーガン、ボディビルダー、動物の権利活動家」 

    • 3

      「家賃は体で」、住宅難の英国で増える「スケベ大家」

    • 4

      金正恩が習近平の前で大人しくなった...「必死のメモ…

    • 5

      「僕はゲイリー19歳、妻は72歳」 青年が恋に落ちた5…

    • 6

      ヒトの器官で最大の器官が新たに発見される

    • 7

      「パスタは食べても太らない」──カナダ研究

    • 8

      2度見するしかない ハマってしまった動物たちの異様…

    • 9

      「金正恩を倒せ!」落書き事件続発に北朝鮮が大慌て

    • 10

      こんなエコノミーは嫌だ! 合理的すぎる座席で、機…

    もっと見る

    Picture Power

    レンズがとらえた地球のひと・すがた・みらい