最新記事

フェイクニュース対策

フェイスブックは「信頼できる記事」に掲載料を支払え──ルパート・マードック

2018年1月24日(水)18時00分
アンソニー・カスバートソン

フェイスブックの儲けに比べれば信頼できるニュースに払う掲載料など微々たるもの Dado Ruvic-REUTERS

<フェイクニュース拡散で批判を浴びたフェイスブックは、信頼できるコンテンツを優先すると発表したが、「実弾」なしのきれいごとでは質は向上しない>

「メディア王」ルパード・マードックが、フェイスブックとグーグルに対し、オンラインニュースの掲載料を報道機関に支払うべきだと要求した。

豪ニューズ・コーポレーション会長のマードックは、米経済紙ウォール・ストリートや米大衆紙ニューヨーク・ポストを傘下に持つ。今回の主張は、フェイクニュースを拡散させたと批判を受けたフェイスブックが打ち出した対応策がきっかけになっている。フェイスブック上のフェイクニュースを減らすため、報道機関を格付けし、信頼性の高いニュースを優先的に表示するという。

だがそれでは到底足りないとマードックは言う。「フェイスブックとグーグルは、怪しげな広告配信アルゴリズムを作り、くだらないニュースを大量生産して利益を上げてきた」と、マードックは声明で述べた。「フェイクニュースが問題だと認めることは改善への第一歩だが、フェイスブックとグーグルがこれまでに提案した対策は商業的、社会的、ジャーナリズム的に不十分だ」

フェイスブックのマーク・ザッカーバーグCEOは1月11日、ニュースフィードにコンテンツを自動的に表示するアルゴリズムを変更すると発表。企業やブランドやメディアより、友人や家族、グループが投稿した記事を優先表示させる方針を打ち出した。そして1月19日には、この変更により、表示されるコンテンツのうちニュースは現在の5%から4%に減少すると明らかにした。

ジャーナリストに正当な代価を

「世界は今、センセーショナリズムやニセ情報、敵意が溢れている」と、ザッカーバーグは同日のフェイスブックに書いた。「ソーシャルメディアを使えば、人々はかつてないスピードで情報を広められる。もし我々がフェイクニュース対策を講じなければ、問題を増大させるだけだ。だからこそニュースフィードには信頼できる高品質のニュースを優先し、ユーザー共通の土台としなければならない」

それに対してマードックは、フェイスブックはそうしたニュース機関に掲載料を支払うべきだと主張した。そうした手数料はフェイスブックの利益から見れば微々たるものだが、ネットの拡大のおかげで発行部数と広告収入の減少で苦しんでいる報道機関やジャーナリストはそのお金でより質の高い報道ができるようになる、と言った。

「フェイスブックが『信頼できる』報道機関の仕事を助けたければ、そうした報道機関に対して手数料を支払うべきだ」「報道機関はニュースやコンテンツを通じてフェイスブックの価値と品位を高めてきたが、我々はフェイスブックからそれに見合う代価をもらっていない」

(翻訳:河原里香)

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガのご登録を!
気になる北朝鮮問題の動向から英国ロイヤルファミリーの話題まで、世界の動きを
ウイークデーの朝にお届けします。
ご登録(無料)はこちらから=>>

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国・百度のAIチャットボット「アーニー」、ユーザ

ビジネス

中国新築住宅価格、3月は前年比-2.2% 15年8

ワールド

米国防長官、中東の安定強調 イスラエルなどと電話協

ビジネス

中独は共通基盤模索すべき、習主席がショルツ首相に表
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無能の専門家」の面々

  • 3

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像

  • 4

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 5

    キャサリン妃は最高のお手本...すでに「完璧なカーテ…

  • 6

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 7

    金価格、今年2倍超に高騰か──スイスの著名ストラテジ…

  • 8

    イスラエル国民、初のイラン直接攻撃に動揺 戦火拡…

  • 9

    甲羅を背負ってるみたい...ロシア軍「カメ型」戦車が…

  • 10

    中国の「過剰生産」よりも「貯蓄志向」のほうが問題.…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体は

  • 3

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入、強烈な爆発で「木端微塵」に...ウクライナが映像公開

  • 4

    NewJeans、ILLIT、LE SSERAFIM...... K-POPガールズグ…

  • 5

    ドイツ空軍ユーロファイター、緊迫のバルト海でロシ…

  • 6

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 7

    ロシアの隣りの強権国家までがロシア離れ、「ウクラ…

  • 8

    金価格、今年2倍超に高騰か──スイスの著名ストラテジ…

  • 9

    ドネツク州でロシアが過去最大の「戦車攻撃」を実施…

  • 10

    「もしカップメンだけで生活したら...」生物学者と料…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    巨匠コンビによる「戦争観が古すぎる」ドラマ『マス…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中