最新記事

米軍事

トランプは軍事パレードより、4万人の飢えた退役軍人に食事を

2018年3月12日(月)18時15分
ライアン・シット

2017年7月14日、トランプが見惚れたフランスの革命記念軍事パレード(パリ、シャンゼリゼ大通り) Gonzalo Fuentes-REUTERS

<本誌試算=トランプがフランスのまねで言い出した軍事パレードをやるお金があれば、ホームレスになった退役軍人に2週間~1カ月間、食事を提供できる>

外国の軍事パレードを見て感銘を受けたドナルド・トランプ米大統領がアメリカでも実施を検討させていた軍事パレードが、11月11日の退役軍人の日に実施されることがわかった。3月9日、米国防総省が明らかにした。

世界一の軍事大国であるにも関わらず、アメリカではこれまでロシアや中国のような軍事パレードは行ってこなかった。世界最強の軍事力をひけらかせば敵を挑発することになるし、何より金の無駄という批判が強かったからだ。

事実その費用は、米軍を退役後ホームレスになり飢えに苦しんでいる元軍人たちの2~4週間分の食費に相当することが、本誌の分析で明らかになった。

トランプは戦車の行進を希望

トランプが軍事バレードの実施を検討を最初に指示した2月上旬、米行政予算管理局(OMB)のミック・マルバニー長官は下院予算委員会の公聴会で、軍事パレードの費用は1000万~3000万ドルになると証言した。トランプの希望に従い、首都ワシントンの大通りに戦車の隊列を走らせる費用も含んでいる。

実現すれば、トランプが昨年7月のフランス革命記念日にパリで見たフランスの軍事パレードや、北朝鮮、中国、ロシアなどの軍事パレードにも匹敵する規模になるはずだった。だが米国防総省のメモからは、戦車は出動しないことがわかった。道路を傷つけるからだ。

戦車がないのであれば費用も当初の見積もりより減るだろうし、ホームレスになった退役軍人の数もはっきりしないので厳密な計算はできないが、両方の費用を比較すれば、トランプ政権の優先順位が見えてくる。

ホームレスになった退役軍人に関する連邦政府機関と複数のNGOの統計をもとに本誌が分析したところ、軍事パレードにかける費用があれば、トランプは1日3食を最低でも2週間、彼ら全員に提供できることが分かった。

2017年12月に米住宅都市開発省が発表した統計によれば、同年ホームレスになった退役軍人は4万56人で、2016年の3万9471人から1.5%増加した。過去7年でこれほど増えたのは初めてだ。

全米で食料の支援網を持つNPO「フィーディング・アメリカ」は最新のデータから、2015年のアメリカの1食当たりの平均は2.94ドルだという。地域別には、最低がテキサス州南部マーベリック郡の2.04ドル、最高はオレゴン州北部クルック郡の5.61ドルだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中独首脳会談、習氏「戦略的観点で関係発展を」 相互

ビジネス

ユーロ圏貿易黒字、2月は前月の2倍に拡大 輸出が回

ビジネス

UBS、主要2部門の四半期純金利収入見通し引き上げ

ビジネス

英賃金上昇率の鈍化続く、12─2月は前年比6.0%
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像

  • 2

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無能の専門家」の面々

  • 3

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 4

    大半がクリミアから撤退か...衛星写真が示す、ロシア…

  • 5

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 6

    韓国の春に思うこと、セウォル号事故から10年

  • 7

    キャサリン妃は最高のお手本...すでに「完璧なカーテ…

  • 8

    中国もトルコもUAEも......米経済制裁の効果で世界が…

  • 9

    中国の「過剰生産」よりも「貯蓄志向」のほうが問題.…

  • 10

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体は

  • 3

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入、強烈な爆発で「木端微塵」に...ウクライナが映像公開

  • 4

    NewJeans、ILLIT、LE SSERAFIM...... K-POPガールズグ…

  • 5

    ドイツ空軍ユーロファイター、緊迫のバルト海でロシ…

  • 6

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 7

    ロシアの隣りの強権国家までがロシア離れ、「ウクラ…

  • 8

    金価格、今年2倍超に高騰か──スイスの著名ストラテジ…

  • 9

    ドネツク州でロシアが過去最大の「戦車攻撃」を実施…

  • 10

    「もしカップメンだけで生活したら...」生物学者と料…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    巨匠コンビによる「戦争観が古すぎる」ドラマ『マス…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中