最新記事

廃棄物

中国の環境規制強化は喜べない? 行き場失った欧州のプラスチックごみ

2018年5月22日(火)18時55分

5月11日、欧州は、これまで中国に送っていたプラスチック廃棄物の半分強を、他のアジア諸国に送り出した。1月に中国政府が環境規制を強化し、世界最大のリサイクル市場が閉ざされてしまったからだ。スペインで1月撮影(2018年 ロイター/Vincent West)

欧州は、これまで中国に送っていたプラスチック廃棄物の半分強を、他のアジア諸国に送り出した。1月に中国政府が環境規制を強化し、世界最大のリサイクル市場が閉ざされてしまったからだ。

だが、残りの半分をどうするかという複雑な問題が残っている。

当局者によれば、行き場のない廃プラスチックの一部は、建設現場から港に至るまで、さまざまな場所に積み上げられ、新たなリサイクル市場が生まれるのを待っているという。

地元に近い場所でのリサイクルにはためらいがある。プラスチックごみは洗浄・分別が不十分であることが多いからだ。中国が受け入れを拒否するようになったのも、まさに同じ理由からである。

欧州連合(EU)のデータによれば、2018年前半、マレーシア、ベトナム、インドをはじめとする諸国は、欧州からのプラスチック廃棄物の輸入をこれまでより大幅に増やした。だが、これらの諸国、あるいはそれ以外の国々がさらに受け入れを増やしてくれない限り、埋め立て、あるいは焼却以外の選択肢はなくなってしまう。

人口密度が高く、他地域に比べて埋め立ての制約もはるかに厳しい欧州大陸においては、行き場のない数十万トンの廃棄物を焼却することによって、電力・熱を得る足しにするというのが明らかな選択肢だ。

だが欧州がプラスチック廃棄物への対応に苦慮するなか、もっと奇抜なアイデアも発表されるようになっている。たとえば、石油を原料とするプラスチックをいったん地中に埋め、もっと先進的なリサイクル工程が実現した時点で「掘り返す」という方法だ。

英国政府の環境・食料・農村省で首席科学顧問を務めるイアン・ボイド教授は、ロイターの取材に対し、「(欧州の廃棄物処理政策は)今よりもはるかに精妙なものになっていく必要がある。場合によっては、実は埋め立てが非常に優れた選択肢になるからだ」

「私は現行システムに異議を申し立てている」とボイド教授は言う。現行システムとは、欧州の廃棄物処理政策が埋め立てを禁止・制限する一方で、彼が「空の埋め立て」と称する方法、つまり焼却によって汚染物質を大気に放出することをほとんどまったく制限していない事実を指している。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

NY外為市場=ドルが158円台乗せ、日銀の現状維持

ビジネス

米国株式市場=上昇、大型グロース株高い

ビジネス

米PCE価格指数、インフレ率の緩やかな上昇示す 個

ワールド

「トランプ氏と喜んで討議」、バイデン氏が討論会に意
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 3

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 4

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 5

    アカデミー賞監督の「英語スピーチ格差」を考える

  • 6

    大谷選手は被害者だけど「失格」...日本人の弱点は「…

  • 7

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    「性的」批判を一蹴 ローリング・ストーンズMVで妖…

  • 10

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈する動画...「吹き飛ばされた」と遺族(ロシア報道)

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中