最新記事

貿易戦争

G7でのトランプ「口撃」に当惑 カナダに有効な手はあるか

2018年6月13日(水)09時08分

 8日カナダのシャルルボアのG7会場であいさつするトランプ米大統領(左)とトルドー首相(2018年 ロイター/Leah Millis)

トランプ米大統領が通商問題でカナダのトルドー首相に対して猛烈な批判を浴びせ、両国の関係は過去数十年で最悪の状況に陥った。カナダとしては、米国との貿易戦争回避に向けた有効な対応策はかなり乏しくなりつつある。

トランプ氏は、カナダで開催された主要7カ国首脳会議(G7サミット)におけるトルドー氏の態度について「非常に不誠実かつ軟弱」とやり玉に挙げた上で、自動車輸入に関税を課す意向を示唆。この関税が導入されれば、カナダ経済は危機に陥りかねない。

カナダ政府は、トランプ氏の大統領就任以来ずっと米国で政策担当者や企業首脳とのつながりを深めて国益を守ることに努力してきただけに、トランプ氏の予想外かつ異例の「口撃」には当惑を隠せないでいる。事情に詳しい関係者の話では、これまでの米国への働きかけが期待したほど実を結んでいない点への失望感も出ているという。

同国政府は、米国の鉄鋼・アルミニウム輸入制限への報復措置を講じると約束しているとはいえ、経済規模が10倍に達する上に主な輸出先でもある米国を相手に貿易戦争を展開しても勝ち目は極めて薄い。ちなみに国別の米国向け鉄鋼輸出でカナダは第1位だ。

あるカナダ政府当局者は「国内で実行できることは限られる。トランプ氏を説得して輸入制限を止められる人々は米国にしかいないが、彼らが最大勢力になっているわけでもない」と嘆いた。

カナダ政府としては、ホワイトハウス外部の同国に同情してくれそうな議員への働きかけをさらに強める意向のほか、同盟国との連携強化に頼ったり、トランプ氏が口にした貿易政策のすべてを実行しないと期待するしかないことが、打つ手の少なさを物語っている。

オタワ大学のパトリック・レブロンド教授(国際問題)は、カナダの選択肢は限定的で「魔法のような『プランB』」は存在しないという意味だと指摘した。

<楽観材料も>

トランプ氏や同氏の側近は、トルドー氏がG7サミット後の会見でカナダは米国の言いなりにならないと述べたことに強く反発した。ところがトルドー氏は、以前にも数回この種の発言をしている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ECB、賃金やサービスインフレを注視=シュナーベル

ビジネス

焦点:連休中の為替介入警戒、取引減で再動意も 米当

ビジネス

LSEG、第1四半期決算は市場予想と一致 MSとの

ワールド

北朝鮮製武器輸送したロシア船、中国の港に停泊 衛星
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 3

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗衣氏への名誉棄損に対する賠償命令

  • 4

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 5

    マイナス金利の解除でも、円安が止まらない「当然」…

  • 6

    ワニが16歳少年を襲い殺害...遺体発見の「おぞましい…

  • 7

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 10

    ケイティ・ペリーの「尻がまる見え」ドレスに批判殺…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 5

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中