最新記事

中国経済

苦境の中国鉄鋼業 東南アジアから新天地求めアフリカ・南米に熱視線

2018年6月11日(月)12時49分

締め出し

「東南アジア市場は込み合ってきた。南米やアフリカに新たな市場を探す業者が増えている」と、鉄鋼パイプを輸出する河北華洋鋼管の営業マネジャーSteven Yue氏は言う。「今年後半は、南米とアフリカの市場開拓により力を入れる計画だ」

南米とアフリカは、昨年の中国鉄鋼輸出の計8%を占めており、両地域の一部の国々向けの輸出は今年急増してる。

MEPSのデータによると、東南アジア向けは昨年の中国鉄鋼輸出全体の25%を占めているが、前年比では45%減少した。2018年第1・四半期にも、前年同期比で3分の1減少している。

アフリカ最大の経済規模を誇るナイジェリアは、同地域最大の中国産鉄鋼輸入国だ。同国向けの中国鉄鋼輸出は、第1・四半期に15%増加。経済規模第4位のアルジェリア向けは、3倍近くに膨らんだ。

南米では、ブラジル向け輸出が40%増加したほか、ボリビア向けは10倍近くに跳ね上がった。

世界貿易機関(WTO)のデータによると、アジア地域に比べて、ブラジルやコロンビア、チリや南アフリカなどを含めたアフリカ、南米両地域には中国鉄鋼製品に対して反ダンピング税やセーフガード措置を導入しているところは少ない。

中国の輸出企業が新たな市場開拓を進めるにつれ、ブラジルなどで国内サプライヤーと衝突する可能性が出るほか、ロシアなどのライバルと激突することも考えられる。

だが河北華洋鋼管のYue氏は、中国製鉄鋼がアフリカや南米で競争力があるのは、「現地の国内生産力が足りないためだ」と語る。

大きなポテンシャル

中国鉄鋼輸出は2015年に記録した過去最高の1億1240万トンから、2017年には7540万トンにまで下落。中国政府主導のインフラ計画によって国内需要が拡大したためだ。

それでも、中国鋼鉄工業協会は、米国との貿易摩擦が中国の鉄鋼輸出に与える影響を「過小評価するべきではない」と警戒する。

「鉄鋼輸出が今年再び減少すれば、鉄鋼製品が国内市場に流れ、われわれ自身の市況が悪化する」と同協会は先月指摘した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ジョージア「スパイ法案」、大統領が拒否権発動

ビジネス

必要なら利上げも、インフレは今年改善なく=ボウマン

ワールド

台湾の頼次期総統、20日の就任式で中国との「現状維

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部で攻勢強化 米大統領補佐官が
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバいのか!?

  • 3

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイジェリアの少年」...経験した偏見と苦難、そして現在の夢

  • 4

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 5

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 6

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 7

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 8

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 9

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 10

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 9

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 10

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中