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インドネシアで今度はワニ騒動 首都の海岸に出没、過去には犠牲者続出

2018年6月19日(火)18時30分
大塚智彦(PanAsiaNews)

過去のワニによる襲撃事件


なかには襲った人間の遺体をワニが戻してくる場合も Daily Mail / YouTube

2012年1月19日には東ヌサテンガラ州レンバタ村のイロロン川で泳いでいた10歳の少女が一緒に来ていた父親の5メートル前で突然水中から現れたワニに水中に引きこまれそのまま行方不明となる事件があった。必死の捜索もむなしく200メートル離れた場所で少女の衣服だけが見つかり遺体もワニも見つかっていない。同じ川では2011年の12月にも12歳の少年がワニに襲われて死亡している。

2016年3月28日にはイリアンジャヤの有名な観光地ラジャ・アンパットのミニャイフン島でシュノーケリング中のロシア人観光客セルゲイ・ルフバル氏(37)が行方不明となった。その後一部が失われた遺体が発見され、海に生息するイリエワニに襲われて死亡したと警察は判断した。同行していた現地ガイドが「マングローブの林にはワニがいるので近づかないように」と警告したが、セルゲイ氏はそれを無視してマングローブ林に近づいて行ったという。

2018年の2月24日にはスマトラ島ジャンビ州のトゥルクアリ村で川近くの農園に出かけた66歳の女性が行方不明になり、捜索したところ女性の所持品が残されたボート近くで巨大なワニを発見、付近で一部を食べられた女性の遺体もみつかり、このワニに襲われて死亡したと警察が判断する事件があった。

さらに同年3月1日には東カリマンタン州クタイ県サンダラン郡の川で、四肢のない男性の遺体が川で発見され、近くにいた全長約6メートルのワニを警察官が射殺して腹部を切り開いたところ男性の体の一部が発見されたという。男性は食用の貝を採取に行くと家を出たまま行方不明となっていた。

麻薬犯死刑囚の刑務所にワニ利用

こうしたインドネシア各地で続くワニ被害にヒントを得た国家麻薬取締局(BNN)のブディ・ワセソ長官が2015年11月に「麻薬関連犯罪で死刑が確定した服役囚を収監する専用の刑務所をどこかの島に今後設置する方針だが、この島から脱走できないように死刑囚監視にワニを活用することを検討したい」と発言した。


死刑囚の監視にワニを活用するアイデアは果たして実現する? BBC News / YouTube

冗談のような話しだが「ワニは獰猛で人間の看守と異なり賄賂を受け取らないので死刑囚の監視には最適だ」と同長官は発言。死刑囚専用の「監獄島」の計画は場所も時期も未定で実現の見通しには疑問符が付けられている。

しかし、少なくとも「ワニの監視」発言の背景には麻薬犯罪の増加とそれに伴う死刑囚の増加、看守の腐敗などというインドネシアが現在直面している問題が指摘できるだろう。


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大塚智彦(ジャーナリスト)
PanAsiaNews所属 1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など

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