最新記事

株価

米中貿易戦争で漁夫の利 投資家に人気の「空売り銘柄」は?

2018年6月22日(金)16時05分

6月20日、貿易を巡る米中対立がエスカレートし、米国株式市場には激震が走ったかもしれないが、一部投機筋は全面的な貿易戦争にさらされる米企業に対する絶好の空売り機会だと捉えている。NY証券取引所で5月撮影(2018年 ロイター/Brendan McDermid)

貿易を巡る米中対立がエスカレートし、米国株式市場には激震が走ったかもしれないが、一部投機筋は全面的な貿易戦争にさらされる米企業に対する絶好の空売り機会だと捉えている。

航空機大手ボーイング、自動車大手ゼネラル・モーターズ(GM)、カジノ運営大手ラスベガス・サンズ、宅配大手フェデックス、アグリビジネス大手ブンゲなど、中国との緊張の高まりにより痛手を被る可能性がある米国企業の空売り建玉は今月、増加していると、分析会社S3パートナーズは指摘。

「空売り銘柄の変化は、貿易を巡る緊張の高まりと直結していると思う」と、ニューヨークにある同社で調査を率いるイーホリ・ドゥサニウスキー氏は言う。

空売り投資家は、株価下落後に安く買い戻すことを期待して、手元にない株式を借りて売ることで、利ざやを稼ごうとする。

トランプ米大統領は15日、500億ドル(約5.5兆円)相当の中国製品に25%という高額な輸入関税をかけると発表。これを受け、中国も同様の措置を取ると直ちに反撃した。

さらにトランプ大統領が18日、もし中国が報復するなら、新たに2000億ドル相当の中国製品に10%の追加関税をかけると脅しをかけると、緊張は一段とエスカレートした。

ビジネスの大部分を中国に依存する多国籍企業は、貿易戦争となれば、とりわけリスクにさらされるとみられる。

S3のデータによると、米国で最大の対中輸出企業であるボーイングの空売り残高は6月時点で3%増、GMの場合は12%と急増している。

しばしば米国経済の指標とされ、貿易戦争リスクの高まりで株価に圧力がかかっているフェデックスの空売り残高は今月、8%増加している。

強化ガラスなどで知られるコーニングの空売り残高も4%の増加。一方、中国の特別行政区マカオから収益の多くを得ているラスベガス・サンズは20%増えている。

また、収益の大部分を中国に依存する傾向にある米半導体業界も、空売り対象とされている。15日以降、最も大量に空売りされた中にエヌビディアとマイクロン・テクノロジーも含まれている。

(翻訳:伊藤典子 編集:下郡美紀)

Saqib Iqbal Ahmed

[ニューヨーク 20日 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2018トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イラン大統領、16年ぶりにスリランカ訪問 「関係強

ワールド

イランとパキスタン、国連安保理にイスラエルに対する

ワールド

ロシア、国防次官を収賄容疑で拘束 ショイグ国防相の

ワールド

インドネシア中銀、予想外の利上げ 通貨支援へ「先を
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 2

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 3

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の「爆弾発言」が怖すぎる

  • 4

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 5

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 6

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 7

    イランのイスラエル攻撃でアラブ諸国がまさかのイス…

  • 8

    「なんという爆発...」ウクライナの大規模ドローン攻…

  • 9

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 10

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 10

    ダイヤモンドバックスの試合中、自席の前を横切る子…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中