最新記事

米経済

トランプ経済「絶好調」はただの幻想? 見えてきた失速の要因

2018年7月10日(火)17時40分
ビル・サポリト

アメリカの金融大手ゴールドマン・サックスは昨年11月、中国の政府系ファンド「中国投資有限責任公司(CIC)」と手を組んで、50億ドル規模のファンドを立ち上げることを明らかにした。目的は、中国市場に製品を輸出するようなアメリカ企業に投資することだ。

「米国内で(輸出用の)製品が製造されれば、アメリカの雇用が増える」と、ゴールドマン・サックスのロイド・ブランクファインCEOは言う。だが、トランプ政権が貿易戦争を過熱させれば、こうしたアメリカ国内への投資も脅かされてしまう。

ほかの国に関税を課せば、相手国による対抗措置が避けられない。カナダは総額128億ドル相当、メキシコは総額30億ドル相当のアメリカからの輸入品に関税を課すことを計画している。これにより打撃を被るのは、トランプの主要な支持基盤である農業と製造業だ。

16年の米大統領選でトランプがペンシルベニア州、オハイオ州、ミシガン州といった「ラストベルト地帯」で圧勝した一因は、アメリカの製造業を復活させると訴えたからだった。トランプが他国に仕掛ける貿易戦争は、これらの地域を苦しめる結果を招く。

それでもトランプは、歴史家や経済学者、そしてもしかすると自らの支持者たちが抱いている不安もどこ吹く風。相変わらず、「建国以来最高の好景気」を自画自賛し続けている。

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガのご登録を!
気になる北朝鮮問題の動向から英国ロイヤルファミリーの話題まで、世界の動きを
ウイークデーの朝にお届けします。
ご登録(無料)はこちらから=>>

[2018年7月10日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ペトロブラス、CEO交代で株価急落 政治介入拡大懸

ビジネス

ディズニー、従来型テレビネットワーク向け投資大幅削

ワールド

イスラエル国防相、ガザ戦後統治で首相に異議 軍事支

ビジネス

米アマゾン、40年まで独で84.4億ドル投資 欧州
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 2

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史も「韻」を踏む

  • 3

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダブルの「大合唱」

  • 4

    マーク・ザッカーバーグ氏インタビュー「なぜAIを無…

  • 5

    それでもインドは中国に勝てない...国内企業の投資意…

  • 6

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 7

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 8

    羽田空港衝突事故で「日航の奇跡」を可能にした、奇…

  • 9

    総額100万円ほどの負担増...国民年金の納付「5年延長…

  • 10

    奇跡の成長に取り残された、韓国「貧困高齢者」の苦悩

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 4

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 7

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中