最新記事

異常気象

気温上昇が自殺の増加を招く──米国とメキシコの大規模調査で確認

2018年7月25日(水)17時50分
高森郁哉

気温が上昇すると、自殺率が増加し、抑うつ傾向が強まる Mike Segar-REUTERS

<米スタンフォード大学の研究チームによると、月間平均気温が上昇すると、自殺率が増加し、抑うつ傾向のツイッター投稿も増えることがわかった>

7月23日に埼玉県熊谷市で国内最高気温となる41.1度を記録した日本を含め、この夏はオマーン、アルジェリア、台湾など世界各地で過去最高の暑さを記録している。そんななか、気温上昇が自殺件数の増加を招くという、気になる研究論文が公表された。

メキシコでは1度上昇で自殺率2.1%増

米スタンフォード大学のマーシャル・バーク博士らの研究チームによる論文が、気候変動分野の学術誌「Nature Climate Change」に掲載され、英メディア「ザ・ガーディアン」などが報じている

研究者らは米国とメキシコで、数十年におよぶ包括的なデータを分析。その結果、月間平均気温が1度(セ氏)上昇すると、自殺率は米国の郡部で0.7%、メキシコの自治体では2.1%増加することがわかったという。

研究者らはまた、ツイッターの投稿600万件以上を調査し、暑さが増す期間には「孤独」「悲しい」「さびしい」といった抑うつ傾向の投稿が増えることを明らかにした。

米・メキシコで2050年までに自殺者4万人増の可能性も

論文では、気候変動による気温上昇が今後も続く場合の自殺者の増加も試算している。国連が2100年までの気温変化を予測した4つのシナリオのうち、最悪のシナリオであるRCP8.5(2046〜2065年に基準年の気温から1.4〜2.6度上昇)の場合、自殺者の数は2050年までに9000〜4万人増えると予測した。

※厚生労働省が所管する自殺総合対策推進センターでは、全国の相談窓口一覧を掲載している

Study: Suicide linked to Earth's hotter climate-USA TODAY

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ドル157円台へ上昇、34年ぶり高値=外為市場

ワールド

米中外相会談、ロシア支援に米懸念表明 マイナス要因

ビジネス

米PCE価格指数、3月前月比+0.3%・前年比+2

ワールド

ベトナム国会議長、「違反行為」で辞任 国家主席解任
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 3

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 4

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP…

  • 5

    未婚中高年男性の死亡率は、既婚男性の2.8倍も高い

  • 6

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 7

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 8

    アカデミー賞監督の「英語スピーチ格差」を考える

  • 9

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 10

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこ…

  • 8

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 9

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中