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アメリカ経済アメリカ経済を自画自賛するトランプ発言は本当? その実態を検証してみた
7月27日、トランプ米大統領は、第2・四半期GDP速報値が前期比年率4.1%増と力強い成長を記録しことについて、自身の指導力の下で経済が目覚ましく好転しつつある兆しだと称賛した。ところが事実はそれほど単純ではない。NYで27日撮影(2018年 ロイター/Lucas Jackson)
トランプ米大統領は27日、第2・四半期国内総生産(GDP)速報値が前期比年率4.1%増と力強い成長を記録しことについて、自身の指導力の下で経済が目覚ましく好転しつつある兆しだと称賛した。ところが事実はそれほど単純ではない。
以下にトランプ氏がGDP速報値発表後に行った3つの重要な発言を取り上げ、実態と照らし合わせてみる。
●トランプ氏「われわれは過去13年間で最も高い平均成長率を達成する流れにある。もしこのままの成長ペースなら、米経済はジョージ・W・ブッシュ政権やオバマ政権の時代に想定されていたよりも10年余り早く規模が2倍になるだろう」
検証:商務省のデータでは、今年上半期の米経済は年率3.1%の成長だったので、下半期が同じであれば年間でも確かに2005年以降で最高のペースを達成する。
しかしエコノミストの間では、成長率は今後鈍化するとの予想が一般的。なぜなら足元の強い成長は、駆け込み輸出という一時的要因がもたらしている面があるからだ。米政府が導入した関税に対する主要貿易相手の対抗措置が7月に発動されるのを前に、米国から大豆その他の製品が大急ぎで出荷された。
過去においても一時的要因が成長上振れにつながった局面は数多い。例えばオバマ政権下では4四半期、ジョージ・W・ブッシュ政権下では3四半期で成長ペースが加速したが、いずれもその後勢いが弱まった。
●トランプ氏「われわれは先の選挙以降で370万人の新規雇用を創出した。これは選挙期間中には考えられなかった数字だ」
検証:2016年11月の大統領選以降で、米国の雇用が370万人増加したのは間違いない。ただしそれは想定可能な伸びであり、実際には幅広く予想されていた雇用創出鈍化の動きの一部としてとらえられる。16年の選挙後の非農業部門雇用者数の月間平均増加幅は19万1000人で、それより前の2年間の21万9000人を下回っているのだ。米経済の雇用拡大は10年から続いてきており、エコノミストによると、失業者の減少もあって新規雇用は減速していく見込みだ。
●トランプ氏「減税を実施して最初の3カ月で、海外から米国に3000億ドル超が流入した」
検証:商務省のデータでは、昨年12月の税制改革により、米企業は今年第1・四半期に海外子会社から3056億ドルを国内に還流させた。
そして第1・四半期に企業は設備投資を拡大した。だが大手企業がより資金を投じたのは配当支払いと自社株買いであり、彼らの手元資金量の方が投資機会よりずっと多いことを示唆している。
アップルの場合、設備投資額は前年同期の30億ドルから42億ドルに増えた半面、自社株買いの規模は過去最高の235億ドルに達し、配当支払いにも32億ドルを費やした。
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