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「嫌われ力」が世界を回す

落合陽一に聞く、落合陽一のこと

2018年9月6日(木)18時00分
小暮聡子(本誌記者)

Photo: masato kato

<メディアに引っ張りだこの若き科学者、落合陽一は自分に対する評価をどう見ているのか、理解されない孤独を感じることはあるのか......。本誌9/4発売号「『嫌われ力』が世界を回す」未収録のインタビュー>

※本誌9/11号(9/4発売)は「『嫌われ力』が世界を回す」特集。気が付けば、ニュースの主役はイラっとさせる人ばかり。目覚ましく活躍する「逸材」が嫌われるのはなぜか。彼ら「憎まれっ子」こそが時代を変えるのはなぜか。

このところ、メディアに引っ張りだこの若き科学者がいる。落合陽一、30歳。肩書は「メディアアーティスト」、筑波大学准教授、同大学学長補佐、自社のCEOと多彩で、専門は応用物理、計算機科学、それにアートを融合させた作品制作と研究だ。

自らが生み出すテクノロジーと新しい発想、そして落合ならではの「言葉」によって論客としても新風を吹かせ、近著『日本再興戦略』(幻冬舎)では政治や教育、社会面での日本改革案(落合の言葉によれば「アップデート」)を打ち出し注目を集めている。

例えば落合は、「少子高齢化と人口減少についてはテクノロジーで対処していくことができるので、何の問題もありません」と言い切り、何を機械化すべきで、し得るのか、具体的な「解」を提示する。

しかし、時代を切り開こうとする人、改革しようとする人に批判はつきものだ。9月4日発売の本誌『「嫌われ力」が世界を回す』特集では、バラク・オバマ元米大統領やFacebookのマーク・ザッカーバーグCEOなど「嫌われた」改革者たちを紹介。落合もその1人として取り上げ、本人に「批判されること」について率直な疑問をぶつけた。

ここでは趣向を変え、「改革者」落合陽一が自分に対する評価をどう見ているのか、理解されない孤独を感じることはあるのかなど、子供の頃の経験も含めて聞いた本誌未収録のインタビューを掲載する。

◇ ◇ ◇

分かってもらえないことに慣れてしまった

――日本を改革する、その具体的なプランを教えてほしい。

いくつかあるのだが、まずはテクノロジーこそ社会保障や公共政策であると理解されることが重要だ。コミュニティーにとっては、テクノロジーの何を導入して何を導入しないかという価値判断が、政策を作る上での肝となる。

日本の社会問題を、どうやってテクノロジーで解決するか。合理的に解決するにはテクノロジーを導入すべきなのだが、日本人は根性論でものを解決しようとするので、「がんばらない」という解決策があると説明するのは難しい。がんばらずに頭を使ってスマートに解決しようと言うと、すぐに反発を招く。

ただ、日本人は元来、テクノロジーが好きだ。西洋人は人型ロボットに限らずロボットがあまり好きではないが、マスメディアによってロボットやテクノロジーへの認知度が高まった日本は、機械親和性が高いと思う。

たとえば介護ロボットの導入を促すときには、こう聞けばいい。ウォシュレットに自分のお尻を洗ってもらうのと人間に洗ってもらうのとどちらが好きですか、と。それと同じように、ロボットアームにおむつを替えてもらうのと人間に替えてもらうのはどちらがいいかと尋ねれば、ロボットアームとなるだろう。

日本はロボットベースの社会、テクノロジーベースの社会に変えやすいはずだ(編集部注:落合の研究室では、半自動運転機能を搭載した車いすや、レンズのいらない網膜投影の眼鏡など、身体的不自由を解消するテクノロジーの開発にも取り組んでいる)。

――特に日本には「出る杭は打たれる」という風潮がある。改革を唱えるなかで、自分も批判されていると感じることはあるか。

批判というか、今の時代は変な石が飛んでくることはある。(ブロガーの)はあちゅうが結婚したらはあちゅうのことをみんなで中傷する、とか。僕の場合は直接的にはそんなにはないけれど、誰かが僕にムカついているということはあるかもしれない。インターネット上では僕のことを「胡散臭い」とか、「カルト宗教と変わらない」と言ったりする人はいる。でも特に根拠はない気がするから、僕はあまり気にしていない。

根拠や理解のない批判をする人というのは、常にいると思う。(自分は)よく「意識高い系」と言われることがあって、「意識高い系」自体はいい言葉だと思うのだが、(そういう言葉があるのは裏を返すと)分からないことを分からないって、言えない人たちがいるということなのかと。つまり僕がやっていることは、理解されにくいのかもしれない。

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