最新記事

選挙

インドネシア大統領選、早くも前哨戦スタート イスラム教徒票に思惑、曲玉も

2018年9月20日(木)17時20分
大塚智彦(PanAsiaNews)

ジャカルタの中央選挙委員会へ大統領選挙の出馬届を出したジョコ・ウィドド候補組(左)とプラボウォ・スビヤント候補組(右) Antara Foto/Akbar Nugroho Gumay/REUTERS (L), Willy Kurniawan/REUTERS (R)

<投票はまだ半年も先なのに早くも実質的な選挙戦が始まったインドネシア大統領選挙。現職と新人が自身の魅力をアピールしようとやっきになっているが──>

2019年4月の大統領選挙と国会議員選挙を控えたインドネシアで2組が立候補している正副大統領候補の両陣営による選挙活動が早くも前哨戦モードに突入している。人口が世界4位の約2億5000万人、そして世界最大のイスラム教徒人口を擁するインドネシアだけに、国民の直接選挙で行われる大統領選で大勢を大きく左右するのが人口の88%を占めるイスラム教徒の票の行方である。

このため現職ジョコ・ウィドド大統領は副大統領候補にイスラム教指導者のマアルフ・アミン氏を選んだ。75歳の高齢ながらマアルフ氏はインドネシア最大のイスラム教穏健組織である「ナフダトール・ウラマ(NU)」の最高指導者であり、イスラム教聖職者の組織「ウラマ--評議会(MUI)」の議長でもある。インドネシアを代表するイスラム教界の重鎮を相方に選んだことから、ジョコ・ウィドド大統領がいかにイスラム教徒の有権者に配慮しているかが如実に表れている。

そこには「イスラム教徒を敵に回しては大統領にはなれない」というインドネシアの現状が見て取れる。

このマアルフ氏が9月16日にジャカルタで開かれたイスラム教聖職者の集会に参加した。集会の終了後にマアルフ氏は「影響力のあるイスラム聖職者約400人がジョコ・ウィドド大統領への支持を表明してくれた」と明らかにした。ここで言う「ジョコ・ウィドド大統領への支持」とは同時に副大統領候補でもあるマアルフ氏自身への支持をも意味するのだ。

さらにマアルフ氏は支持を表明してくれた聖職者の中には全国にあるイスラム寄宿学校の校長が含まれていることを指摘し「学校の学生らは校長の指示に従うことが多い」として寄宿学校の学生らの支持も得られるとの楽観的な見通しを示した。

9月23日から正式にスタートする選挙キャンペーン(選挙運動)の期間中には、全国の寄宿学校を個別に訪問してさらに支持を固めたいとの意向もマアルフ氏は明らかにした。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国、国内ハイテク企業への海外投資を促進へ 外資撤

ビジネス

米債務急増への懸念、金とビットコインの価格押し上げ

ワールド

米、いかなる対イラン作戦にも関与せず 緊張緩和に尽

ワールド

イスラエル巡る調査結果近く公表へ、人権侵害報道受け
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離れ」外貨準備のうち、金が約4%を占める

  • 3

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負ける」と中国政府の公式見解に反する驚きの論考を英誌に寄稿

  • 4

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 5

    「韓国少子化のなぜ?」失業率2.7%、ジニ係数は0.32…

  • 6

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 7

    日本の護衛艦「かが」空母化は「本来の役割を変える…

  • 8

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 9

    毎日どこで何してる? 首輪のカメラが記録した猫目…

  • 10

    便利なキャッシュレス社会で、忘れられていること

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像

  • 4

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 7

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 8

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 9

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 10

    大半がクリミアから撤退か...衛星写真が示す、ロシア…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中