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ビジネスSNSリンクトインへ中国が超攻撃的スパイ作戦 米高官が指摘

2018年9月9日(日)12時47分

中国に寝返ったCIA元職員

エバニナ氏は、この問題を取り上げる理由の1つには、中央情報局の元職員ケビン・マロリー被告の事件があったからだと指摘する。

マロリー被告は6月、中国のスパイに機密情報を売り渡した容疑で有罪評決を受けた。

公判記録や裁判の証拠によれば、中国語を流ちょうに話すマロリー被告は、経済的に困窮していた。2017年2月、リンクトインのメッセージで、ヘッドハンターを装った中国籍の人物が彼に接触。リチャード・ヤンと名乗るこの人物の手引きで、同被告は上海のシンクタンクで働いていると称する男に電話連絡を入れた。

連邦政府の訴状によれば、その後マロリー被告は上海を2度訪問。中国側の接触相手が情報機関の関係者だと知りつつ、与えられた特殊な携帯デバイスを使って米国の国防機密を売ることに同意した。彼は9月に刑を宣告される予定だが、終身刑を下される可能性もある。

ロシアやイラン、北朝鮮なども、スパイ候補を探すためにリンクトインなどのサービスを活用しているが、米国の情報機関当局者は、最も活発で最大の脅威は中国だと指摘する。

米当局者によれば、中国の国家安全部には、情報機関に雇用されていないが連携している「協力者」がおり、スパイ要員候補にアプローチするために偽アカウントを作成しているという。

こうした工作の標的は、スーパーコンピューターや核エネルギー、ナノテクノロジー、半導体、ステルステクノロジー、医療、ハイブリッド穀物・種子、再生エネルギーなどの分野における専門家らだという。

中国の情報機関は採用活動のために、賄賂や偽のビジネス企画案を活用している。たとえば研究者や科学者であれば、学術論文や専門論文に対する報酬を提示され、その後、米国政府や企業の秘密を提供するよう要請されたり、圧力を受けたりする場合があるという。

米情報機関の高官によれば、偽アカウント作成者の一部は中国情報機関とかかわりのあるIPアドレスにリンクしており、またペーパーカンパニーが、経営幹部のヘッドハンティングを手掛けているように偽装したアカウントもあるという。

この高官によれば、リンクトインを通じて標的にされた米国人と、2014年から2015年にかけて複数のサイバー攻撃を受けた米連邦政府人事局から流出したデータには、「ある程度の相関関係」が認められたという。

この時、ハッカーは、セキュリティチェックのために身元調査を受けた米国人2200万人以上について、住所や財務・医療記録、職歴や指紋といった重要な個人情報を盗みだした。

この大規模なサイバー攻撃の首謀者として最も疑わしいのは中国だと、米国側は特定したが、当時の中国外務省はこの主張を「馬鹿げた理屈」と一蹴した。

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