最新記事

日本社会

地方を滅ぼす「成功者を妬む」ムラ社会 「3つのネチネチ」が成功者を潰す

2018年10月25日(木)15時30分
木下 斉(まちビジネス事業家)*東洋経済オンラインより転載

また、全国各地で見られる「飲食店の食べ歩き企画」などもこのパターンに入ります。当初は有志の良いお店だけで企画していたのに、成功した後、成果を手にしたい行政側の思惑や成功を妬んでいる店などが絡み、施策化して補助金などが投入されるようになります。すると「税金を使うのだから一部店舗だけでは駄目だ!」といって、「しょうもない店」もこうした企画に入れるようになります。

しかし、予算を入れてタダで参加する店などが増加して発展するかといえば、逆に参加者の満足度が低下していき、使う側にも敏感にその雰囲気が伝わります。結果として企画そのものが陳腐化し、破綻します。

(2)事業を横取りして奪って潰す

2つ目は事業の横取りです。たとえば、とある地域の生産者が商品開発や営業で血のにじむような努力をして地元産の良質な農産物などを使った新商品を大ヒットさせました。そうすると「あなたのところも組合に属しているのだから」となどといって生産者組合の共同事業にし、さらには「地域を挙げての行政事業にする」といって、地域ブランド認定して事実上横取りしてしまいました。

血のにじむ努力をした「最初の開拓者たち」は、耐える場合もありますが、こうしたことは本質的に許せるわけがありません。意を決したように組合を通さずに出荷する、などとなったりするわけですが、そうすると今度は地元で嫌がらせを受けるなど、あからさまな営業妨害を受けるケースもあります。

さらに、道の駅などの公共施設運営事業などの官民連携事業であれば、集客などで成果をあげた途端に「あの事業者ばかりが運営するのは公平性に欠ける」などとイチャモンをつける人々が出てきます。その結果、運営主体が、地元で政治力のあるまったく別のグループへと鞍替えになり、施設自体を実質的に乗っ取るような事例も地方では出ています。

とはいえ、乗っ取り、鞍替えをさせて人気が維持できるかといえば、当然ながらそんなことはありません。実力がない人々がやると、すぐに人気がなくなり、経営が行き詰まります。

「うわさのある人」というレッテル貼り

(3)風説の流布で人格否定をして潰す

さらに、最悪の場合が(3)の風説の流布でしょう。「気に食わない」ということで怪文書やネット掲示板などにあることないことを書いて、挑戦者、成功者を陥れようとします。

こういう場合、地元議員が事業に絡んでいることが少なくありません。議員が直接、あるいは間接でも信憑性のないことをもとに議会で「黒いうわさがある」などといって質問して、さも実際に発生しているかのような事実へと仕立て上げてしまったりします。また地元のメディアも息がかかっているか、あるいはニュースが少ないため、いざこざがあると批判的論調で取り上げてしまうこともあります。問題なのは、事業の内容だけではなく、安易な人格攻撃に政治、行政、メディア組織が便乗するケースがあることです。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

米、中国関連企業に土地売却命令 ICBM格納施設に

ビジネス

ENEOSHD、発行済み株式の22.68%上限に自

ビジネス

ノボノルディスク、「ウゴービ」の試験で体重減少効果

ビジネス

豪カンタス航空、7月下旬から上海便運休 需要低迷で
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少子化の本当の理由【アニメで解説】

  • 3

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 4

    年金だけに頼ると貧困ライン未満の生活に...進む少子…

  • 5

    「ゼレンスキー暗殺計画」はプーチンへの「贈り物」…

  • 6

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    「人の臓器を揚げて食らう」人肉食受刑者らによる最…

  • 9

    ブラッドレー歩兵戦闘車、ロシアT80戦車を撃ち抜く「…

  • 10

    自宅のリフォーム中、床下でショッキングな発見をし…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 4

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 5

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 6

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 7

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 8

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 9

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 10

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中