最新記事

アメリカ社会

米国でミレニアル世代を中心に「魔女」が急増中、その理由とは

2018年10月10日(水)17時50分
松丸さとみ

米国では最近、魔女の数が驚異的に増加している (写真はイメージ) urbazon-iStock

<米国では最近、魔女の数が驚異的に増加しているという。トランプ大統領やフェミニズムも関わるというその理由は...>

ほうきには乗らないリアルな現代の魔女

魔女というと、ディズニー映画やハリー・ポッターなどファンタジーの世界の話であり、実在しないと考える人が日本では多いだろう。しかし米ニュースサイトのクオーツによると、米国では最近、魔女の数が驚異的に増加しているという。

ただし現代の魔女は、ほうきに乗って空を飛んだり、光る杖で魔法をかけたりといった姿とは少し異なるようだ。

まず、魔女は「ウィッカ」や「ドルイド」といった古い宗教と深い関係がある。これらはもともと、キリスト教が入ってくる前のケルト地方(今のアイルランドや英国の一部)で信仰されていた土着の宗教で、呪術などを行っていた。

20世紀に入り、ジェラルド・ガードナーという英国人がウィッカを現代に蘇らせた。米国で現在、魔女と結び付けられているのはこの現代版ウィッカとされているが、ドルイドを信仰する団体も米国内に複数あるようだ。なお、現代版ウィッカは1986年に、裁判によって正式に米国で宗教として認められている。

ウィッカ最大のウェブサイト「ザ・ケルティック・コネクション」によると、ウィッカは魔術とは必ずしも同義ではなく、「古代魔術の伝統をもとにした現代の宗教」というのが最も的確な説明だとしている。同サイトはまた、ウィッカでの魔術は「個人の自由な考えや意思を促し、地球と自然について学んだり理解したりすることで、生きとし生けるものすべてに神性を認める」ことだと説明している。

こうした魔術は「白魔術」でも「黒魔術」でもなく、「緑魔術」つまりグリーンで地球にやさしい魔術と呼ばれているようだ。

クオーツによると、こういった考えが、ヨガやマインドフルネス、瞑想などに傾倒していた米国のミレニアル世代(1980〜2000年前後に生まれた世代)を引きつけたようだ。

コネチカット州にあるトリニティカレッジが1990〜2008年の間に、宗教に関する大規模な調査を全米で3回行った。その結果、1990年には8000人だったウィッカ信仰者が、2008年には34万2000人に増加していた。さらに、ペーガン(多神教のことで、通常はキリスト教が入る前の土着の宗教を指す。調査では明記していないが、ドルイドが含まれる可能性もある)を信仰するという人も1990年当時は数字として現れていなかったが、2008年には34万人になっていた。

また、ピュー研究所が2014年に行った調査では、米国人のうち自分の宗教をウィッカまたはペーガンだとした人の割合は0.4%、100万〜150万人に達した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イラン、イスラエルへの報復ないと示唆 戦火の拡大回

ワールド

「イスラエルとの関連証明されず」とイラン外相、19

ワールド

米石油・ガス掘削リグ稼働数、5週間ぶりに増加=ベー

ビジネス

日銀の利上げ、慎重に進めるべき=IMF日本担当
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ公式」とは?...順番に当てはめるだけで論理的な文章に

  • 3

    便利なキャッシュレス社会で、忘れられていること

  • 4

    「韓国少子化のなぜ?」失業率2.7%、ジニ係数は0.32…

  • 5

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 6

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 7

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離…

  • 8

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 9

    毎日どこで何してる? 首輪のカメラが記録した猫目…

  • 10

    ネット時代の子供の間で広がっている「ポップコーン…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像

  • 4

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 5

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 9

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 10

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中