最新記事

中国

芸能界に続いてインターポール、中国でいま何が起きているのか

2018年10月11日(木)12時40分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

インターポールの元総裁だった孟宏偉 Jeff Pachoud/Pool via Reuters

ファン・ビンビンに続いて今度はまたインターポールの総裁だった孟宏偉が捕まった。中国でいま何が起きているのか。そこには「党と国家機構改革」に関する一連の変化と国際指名手配に関する激しい闘いがある。

今年3月に決議された「党と国家機構改革」

今年2月26日から28日にかけて中国共産党第19回党大会三中全会(第三回中央委員会)が北京で開催された。中共中央政治局委員25名がひな壇にズラリと並んでの会議だ。

そこで「党と国家機構改革方案」(以下、方案)なるものが提案された。

中共中央における「党の機構」と国務院における「行政機構改革」の両方を含む。

その中で、今回のテーマと密接に関係する二つの方案が提起されている。

一つ目は方案(一)にある「国家監察委員会の設置」(新設)で、二つ目は方案(十一)にある「中共中央宣伝部の管轄」に関する変更である。

一つ目をご説明する。

習近平が2012年11月に中共中央総書記になると、党員の紀律を管轄する「中共中央紀律検査委員会」に国務院にある「国家監察部」を合併させる形で反腐敗運動を進めてきた。

それに対して、反腐敗運動をさらに強化するために、今年の三中全会では「国家監察部」を格上げして、国務院の行政自体をも監察する「国家監察委員会」を設置し、同じように中共中央紀律検査委員会とともに反腐敗運動を推進することとした。

「国家監察部」と「国家監察委員会」とでは、何が違うのかというと、「部」は単なる中央行政省庁の一つで、教育部、公安部、財政部、外交部...などと同じように、日本の「省」に当たる。

ところが中国では、「委員会」というのがあって、委員会は「部」よりも上の存在なのだ。いくつかの「部」を束ねて、「部」に対しても意見が言えるのが「委員会」である。

では、二つ目。

中共中央宣伝部(中宣部)というのは1924年に設立された。中国共産党が誕生したのが1921年なので、建党3年後から存在する組織である。あまり武器を持っていなかった毛沢東にとって、「プロパガンダ」ほど大きな武器はなかった。宣伝部はそのプロパガンダを担う部局だ。当時は印刷物の「チラシ」や歌や露店の劇などが主たる手段で、中宣部の下には早くから文芸局が存在した。

改革開放後は新聞雑誌あるいは歌とか劇以外に、テレビや映画などが盛んに上映されるようになり、中宣部の文芸局といった小さな組織では担いきれなくなった。そこで中宣部の下に、たとえば「国家広播(ラジオ)電影(映画)電視(テレビ)総局」とか「新聞出版総局」といった多くの下部組織を国務院(政府)側に置き、間接的に中宣部が管轄するようになる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ユーロ圏銀行融資、3月も低調 家計向けは10年ぶり

ビジネス

英アングロ、BHPの買収提案拒否 「事業価値を過小

ビジネス

ドル一時急落、154円後半まで約2円 その後急反発

ビジネス

野村HD、1―3月期純利益は前年比7.7倍 全部門
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 3

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 4

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP…

  • 5

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 6

    未婚中高年男性の死亡率は、既婚男性の2.8倍も高い

  • 7

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 8

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこ…

  • 8

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 9

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中