最新記事

金融

株式市場にiPhoneショック 見飽きた悪材料が嫌気されたワケ

2018年11月13日(火)16時07分

裁量系プレーヤーが売り転換

株安が進んだもう1つの理由は、直近のマーケットを主導していたプレーヤーの特徴にある。

CTA(商品投資顧問業者)やリスク・パリティ系ヘッジファンドなど「機械系プレーヤー」ではなく、グローバルマクロやロング・ショートなど「裁量系プレーヤー」が押し目買いを入れていたと、野村証券クロスアセット・ストラテジストの高田将成氏は指摘する。

相場のトレンドを重視する機械系プレーヤーに対し、裁量系プレーヤーはファンダメンタルズの材料を瞬時に分析、判断してトレードを行う。機械系プレーヤーが相場を主導している場合は、ネガティブな材料が多少出ても、相場の勢いが勝ることが多いが、裁量系プレーヤーは材料に敏感に反応し、相場の方向も変わりやすい。

「米中間選挙でねじれ議会が発生。財政拡大策が通りにくくなり、金利も上がりにくくなるとみた裁量系プレーヤーが、手探りながらもハイテク株やグロース株の押し目買いを見せていた。だが、アップルの材料が出て、一気に警戒感を強め、売りに転じたようだ」と高田氏は分析する。

また、原油価格が下げ止まらず、米WTI先物は12日時点で初の11日連続安を記録した。13日の市場でも軟調な展開だ。「今年前半、活発だった株式ロングと原油ロングを組み合わせたトレードが、巻き戻されているようだ」(欧州系証券)との指摘もある。

日本株が一番反応した理由

アップル関連株やハイテク株売りは、日本だけではなく、アジア全体に広がっている。台湾ではタッチディスプレーを手掛ける英特盛(GIS)やケーシングの可成科技、韓国ではサムスン電子、SKハイニックスなどが売られている。

しかし、その中でも日本株は相変わらず下げがきつい。日経平均の下げ幅は一時700円を超え、下落率では3.21%に達した。前場時点(日本時間13日11時30分)でアジア断トツの下落率であり、「震源地」である米国のダウの2.32%、ナスダックの2.78%も上回っている。

日本株は流動性が高く、市場でリスクオン・オフが起きた際に売買しやすい株式という認識がグローバル投資家の間でも浸透している。このため「投資家のセンチメントが回復すれば、日本株の戻りも大きくなる」(欧州系投信)と楽観的にみることもできる。

ただ、日銀のETF(上場投資信託)購入などインデックスの買いによって、バリュエーションが歪められている懸念が、日本株にはつきまとう。「ファンダメンタルズ分析を重視する投資家にとっては、扱いにくい株式だ。そのせいか分からないが、海外からの決算発表後のリアクションが悪くなってきた印象がある」とクレディ・スイス証券・株式本部長の牧野淳氏は指摘する。

外国人投資家の日本株売り(現物と先物合計)は10月だけで4.2兆円、年初来の累計は約11兆円となった。割安と言われ続けながら、リーマン・ショック以来の規模に達した海外勢の売りの背景には、単なるリスクオフとは異なる構造的な弱さも垣間見える。

(伊賀大記 編集:田巻一彦)

[東京 13日 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2018トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

20240521issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年5月21日号(5月14日発売)は「インドのヒント」特集。[モディ首相独占取材]矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディの言葉にあり

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ジョージア「スパイ法案」、大統領が拒否権発動

ビジネス

必要なら利上げも、インフレは今年改善なく=ボウマン

ワールド

台湾の頼次期総統、20日の就任式で中国との「現状維

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部で攻勢強化 米大統領補佐官が
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバいのか!?

  • 3

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイジェリアの少年」...経験した偏見と苦難、そして現在の夢

  • 4

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 5

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 6

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 7

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 8

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 9

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 10

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 9

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 10

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中