最新記事

アメリカ政治

女性蔑視のトランプを支える「トランプの女たち」のナゾ

THE TRUMP-BRANDED WOMAN

2018年11月27日(火)17時00分
ニーナ・バーリー(ジャーナリスト)

トランプが大統領に就任して日がたつにつれ、イバンカのブランドは非難を浴びるようになった。トランプは国民に「アメリカ製品を買おう」と呼び掛けていたが、イバンカの会社は中国の労働者を中国の最低賃金より低い給料で働かせていた。今年7月、彼女は会社を閉鎖し、「ワシントンでの仕事に集中したい」と釈明した。

イバンカは中小企業庁などの舞台裏で活動し、少なくとも一つ、有意義な仕事をした。途上国の女性起業家のための基金の設立を助けたことで、これは各方面から称賛されている。

メラニアとは違い、イバンカは権力を理解し、愛している。トランプ・ブランド大使として振る舞い、「女性の活躍推進」の旗印の下に世界のトップレベルの人々と人脈を築いている。ただし父親の政権が「女性の活躍推進」に取り組んでいるようには見えない。

かつて彼女のファンだったメディア界の大物バリー・ディラーに批判されても、中国、インド、EUの指導者と親しくなったイバンカは平気だ。ディラーは今春、こう言っている。「あんな悪人からどうしてこんなに礼儀正しく、親切な娘が生まれたのかと思ったものだ。今ではそう思わないがね」

イバンカは究極の「トランプ」ブランドだ。そのロゴを引きちぎり、独り立ちする日は来るのだろうか。

マーラ・メイプルズ

イバナと結婚していた頃から、女優マーラ・メイプルズとの仲は公然の秘密だった。またトランプが『プレイボーイ』のヌードモデルやラスベガスのショーガールのような「理想の美女」に仕立て上げようとした女性は、おそらくメイプルズが最初だ。

トランプはお抱えのパブリシストやスタイリスト、ジャーナリストを総動員して彼女のブランド化を図った。一冊丸ごとトランプを取り上げた雑誌『本物のトランプ』の表紙に、メイプルズを載せた。プロレス団体WWE(ワールド・レスリング・エンターテインメント)のイベントでインタビュアーをやらせ、美人コンテストでは司会を任せた。人気ドラマ『ベルエアのフレッシュ・プリンス』に、2人で一緒にカメオ出演したこともある。

trumpwomen04.jpg

1000人の参列者に祝福され2人目の妻になった女優メイプルズは、トランプの「理想の女」になるのを最後は拒否 Ron Galella-Wireimage/GETTY IMAGES

メイプルズは93年秋に娘ティファニーを出産。同年12月にはニューヨークのプラザ・ホテルで盛大な結婚披露宴を催した。だが女優としての盛りは過ぎていた。92年に出演したブロードウエイミュージカル『ウィル・ロジャーズ・フォリーズ』は好評だったが、妊娠のため降板した。

やがて、メイプルズはトランプ色に染められることにうんざりした。「メイクなしで出掛けたいタイプの私を、(トランプは)別人に、モノに......強欲のシンボルに変えようとした」

2人は99年に離婚。メイプルズはボディーガードとの不倫を報じられたが、養育費と100万ドルの慰謝料を得た。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

訂正-ポーランドのトゥスク首相脅迫か、Xに投稿 当

ビジネス

午前の日経平均は反落、前日の反動や米株安で

ビジネス

中国新築住宅価格、4月は前月比-0.6% 9年超ぶ

ワールド

北朝鮮技術者が身元偽り米企業でリモート勤務、支援の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 2

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた異常」...「極めて重要な発見」とは?

  • 3

    羽田空港衝突事故で「日航の奇跡」を可能にした、奇跡とは程遠い偉業

  • 4

    存在するはずのない系外惑星「ハルラ」をめぐる謎、…

  • 5

    老化した脳、わずか半年の有酸素運動で若返る=「脳…

  • 6

    アメリカはどうでもよい...弾薬の供与停止も「進撃の…

  • 7

    共同親権法制を実施するうえでの2つの留意点

  • 8

    半分しか当たらない北朝鮮ミサイル、ロシアに供与と…

  • 9

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 10

    総額100万円ほどの負担増...国民年金の納付「5年延長…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 7

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中