最新記事

ベトナム

ベトナム、女性人権活動家の国旗侮辱罪を初公判で結審 2年9か月実刑判決は司法の茶番と批判

2018年12月2日(日)12時44分
大塚智彦(PanAsiaNews)

女性人権活動家にベトナムの司法当局は有罪判決が出したが…… Người Việt Daily News / YouTube

<一党独裁で民主化活動をことごとく弾圧するベトナム当局。だが母である活動家は強かった──>

ベトナムの裁判所は11月30日、女性人権活動家に対して「国旗侮辱罪」で禁固2年9カ月の実刑判決を言い渡した。同日開かれた初公判で検察、弁護側の主張を聞いた上で裁判官が判決を即日言い渡すというもので、被告や被告側の弁護士は「判決はあらかじめ用意された茶番劇」であると批判している。

同日午後1時半(ベトナム時間)から始まった女性人権活動家で著名ブロガーでもあるフイン・トゥク・ヴィーさん(33)に対する初公判は、当初11月22日午前7時半から開かれる予定だったが、22日当日ヴィーさんの手元に通告が届き延期されていた。

さらに初公判を開く裁判所も当初予定されていた中部高原ダクラク省の中心部にある省裁判所からヴィーさんの自宅があるブオンホー地方の人民地方裁判所に急きょ変更して開かれるなど、支援者や関係者の傍聴を困難にするような処置が裁判所当局によって行われたという。

身に覚えのない国旗侮辱罪で有罪

初公判では検察側が2017年にヴィーさんの活動の様子を撮影した映像にペンキが塗られたベトナム国旗が写っていることを指摘して、1999年制定の刑法276条にある「ベトナム国旗及び国章への侮辱罪」に当たると主張した。

これに対し被告側のダン・ディン・マ弁護士は「刑法276条は国連の規定した表現の自由を認める規定にはなっていない。また、ヴィーさんは国旗を侮辱する意図は全くなかった。そもそも問題の画像のペンキが塗られた赤字に星の旗は政府が認める国旗のサイズとは異なり、国旗と断定できない」などと原則論を展開して無罪を主張した。

ヴィーさんにしてみれば、活動する背景にたまたま映りこんでいた国旗らしきものへの「侮辱罪」適用は身に覚えがなく、理解できないことだった。

しかし、ヴィーさんは最初からすでに判決が用意された裁判であると指摘し、「茶番劇であることは明白」として、控訴しても結果が変わる可能性がないと判断、判決に従う意向を開廷前から示していた。

「弁護士、支援者のためにも裁判にかける時間やエネルギーを無駄にしたくない」とその理由を明らかにしていた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

G7外相、イスラエルとイランの対立拡大回避に努力=

ワールド

G7外相、ロシア凍結資産活用へ検討継続 ウクライナ

ビジネス

日銀4月会合、物価見通し引き上げへ 政策金利は据え

ワールド

アラスカでの石油・ガス開発、バイデン政権が制限 地
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離れ」外貨準備のうち、金が約4%を占める

  • 3

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の衝撃...米女優の過激衣装に「冗談でもあり得ない」と怒りの声

  • 4

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 5

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 6

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 7

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 8

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 9

    「イスラエルに300発撃って戦果はほぼゼロ」をイラン…

  • 10

    日本の護衛艦「かが」空母化は「本来の役割を変える…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体は

  • 4

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 5

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 9

    帰宅した女性が目撃したのは、ヘビが「愛猫」の首を…

  • 10

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中