最新記事

ピープル

『Nature』が選ぶ「今年の10人」に、「はやぶさ2」の吉川真准教授

2018年12月22日(土)16時40分
鳥嶋真也

吉川さんは受賞後のコメントにおいて、「(受賞は)『はやぶさ2』の成果があったためだと思います。私が選ばれたというよりは、『はやぶさ2』プロジェクトに注目してもらえたということなのだと思います」と語り、「はやぶさ2」プロジェクトのメンバー全員をねぎらっている。

また、「個人的には修士課程のときから小惑星をテーマに選んで、その後も、天体の地球衝突問題であるプラネタリー・ディフェンス(スペース・ガード)の活動をずっと行ってきたこと(中略)が、評価されたのかもしれません」と振り返る。

そのうえで、「『はやぶさ2』ミッションそのものも大きな成果を挙げましたが、今回注目された理由のひとつには、英語での情報公開を積極的に進めたこともあるかと思います。これは、まさに、私自身がかなり力を注いできたことです。また、海外のチームメンバーとよい関係を保ちながらミッションを行ってきたということも評価されたことかもしれません」と、ミッション・マネジャーとしての自身の役割が認められたのではという考えを挙げた。

それを裏付けるようにNatureは、「はやぶさ2」に搭載された小型着陸機「MASCOT」に関わる、フランス宇宙局のAurelie Moussiさんによる以下のコメントを紹介している。

「吉川さんは利己的な考えをもたず、多くの研究所が関わる共同ミッションを適切に率いる、類まれな能力をもった方です。これはミッションを成功させるための鍵となるものです。いままで一緒に働いたことがある科学者の中で、最も親切な人です」。

space1222b.jpg

リュウグウにタッチダウンする「はやぶさ2」の想像図 (C) JAXA

「はやぶさ2」は来年に向けて力をたくわえる

一方、「はやぶさ2」は小惑星「リュウグウ」到着後、これまでに上空からの地形や地質などの観測や、小型探査機の「ミネルヴァII-1(MINERVA-II-1)」、「MASCOT」のリュウグウへの投下、運用などをこなしたのち、「はやぶさ2」のリュウグウへのタッチダウン(着陸)と、その際に石や砂などのサンプルを回収するためのリハーサルを実施。また、サンプル回収を担当するチームは、リハーサルで得られた成果をもとに、本番に向けた最後の準備を実施した。

そして現在は、地球から見たときに「はやぶさ2」が太陽とほぼ重なる位置に入ってしまう「合(ごう)」と呼ばれる状態にあり、太陽の影響で「はやぶさ2」との通信ができない。そのため「はやぶさ2」を安全な状態に保てるよう、軌道などを工夫した「合運用」を行っている。

合運用は12月22日まで続く予定で、2019年1月1日までかけて、探査活動の再開に向けて探査機の体勢を立て直す、軌道制御が行われる。

現在のところ、「はやぶさ2」のリュウグウへのタッチダウンは、2019年1月以降に予定されている。タッチダウンは複数回行われる予定で、そのうち1回は、リュウグウに弾丸を撃ち込んで内部の物質を露出させ、それを回収するというダイナミックな挑戦も計画されている。

吉川さんは「はやぶさ2」の今後について「リュウグウは「はやぶさ」が探査した小惑星イトカワよりも、はるかにタッチダウンが難しい天体です。是非ともタッチダウンを成功させてリュウグウ表面からサンプルを採取し、探査機を地球に無事に帰還させたいと思います。この目標に向けて「はやぶさ2」プロジェクト一同、一丸となってミッションを遂行できるよう進めていきたいと思っています」と語った。

20181025_CAM-H.gifリュウグウ着陸に向けたリハーサルを行う「はやぶさ2」から撮影された画像 (C) JAXA

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

焦点:認知症薬レカネマブ、米で普及進まず 医師に「

ワールド

ナワリヌイ氏殺害、プーチン氏は命じず 米当局分析=

ビジネス

アングル:最高値のビットコイン、環境負荷論争も白熱

ビジネス

決算に厳しい目、FOMCは無風か=今週の米株式市場
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われた、史上初の「ドッグファイト」動画を米軍が公開

  • 4

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 5

    目の前の子の「お尻」に...! 真剣なバレエの練習中…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    美女モデルの人魚姫風「貝殻ドレス」、お腹の部分に…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 10

    ロシア軍「Mi8ヘリコプター」にウクライナ軍HIMARSが…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中