最新記事

北朝鮮

金正恩4度目の訪中は、トランプへの牽制が目的か

2019年1月17日(木)11時15分
スディプト・マイティ

習近平は中朝首脳会談の前に歓迎式典で金正恩をもてなした(1月8日) Xinhua-REUTERS 

<自分の誕生日1月8日にあえて北京入りしたのは、「新しい道」=対中接近を見せつけるためだった?>

北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)党委員長は1月8日、中国の習近平(シー・チンピン)国家主席からの招待を受ける形で4度目の訪中を行った。この日はちょうど、金の誕生日だった。

金の実際の生年月日については今も諸説あるが、米政府を含む大半の専門家の見方は84年1月8日で一致している。そうすると、金はこの日で35歳。アメリカ人なら、ようやく大統領選に立候補できる年齢に達したことになる(ちなみにトランプ米大統領は72歳、習は65歳)。

父親の故・金正日(キム・ジョンイル)から最高権力者の地位を継承したのは11年末。当時は祖父の代から続く金王朝の最も若い支配者であり、世界最年少の国家指導者だった。

昨年までの金は前任者と違い、核開発計画を進める北朝鮮に対するアメリカ主導の制裁と非難決議を支持した中国に対し、よそよそしい態度を取っていた。トランプは米朝間の緊張が高まっていた17年、中朝の潜在的な不仲を利用して金に圧力をかけようとした時期がある。

だが18年に入ると、金は外交姿勢を一変させる。韓国と急接近した金は、3月に韓国の特使を通じてトランプに初の米朝首脳会談開催を呼び掛けると、同月末には中国を初めて訪問。その後も6月の米朝首脳会談と3度の南北首脳会談の一方で、2度の訪中を行っている。

「中国は良きパートナー」

北朝鮮国営の朝鮮中央通信によると、今回の3日間の訪中には妻の李雪主(リ・ソルジュ)と金英哲(キム・ヨンチョル)党副委員長を含む外交担当責任者が同行している。

BBCによれば、金は11年に父親が中国やロシアを訪問した際に使用した列車に似た特別列車で中国入りした。「(平壌の)鉄道駅では党、政府、軍の幹部の温かい見送りを受けた」と、朝鮮中央通信は報じている。

対米交渉を担当する金英哲が同行したという事実は、19年のどこかの時点で金とトランプの2度目の米朝首脳会談が開催されるという推測を勢いづかせた。

今回の訪中は、貿易戦争を繰り広げる米中両国が問題解決に向けた話し合いを続けている最中の出来事でもあった。金は1月1日の「新年の辞」で、アメリカが北朝鮮への制裁を緩和しなければ「新しい道」を進むことになると警告した。

ワシントンのシンクタンク、センター・フォー・ザ・ナショナル・インタレストのハリー・カジアニス国防研究部長はこう指摘する。「金はトランプ政権に対し、アメリカと韓国以外にも外交的・経済的選択肢があることを強調したいのだ」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

企業向けサービス価格3月は2.3%上昇、年度は消費

ビジネス

スポティファイ、総利益10億ユーロ突破 販促抑制で

ビジネス

欧州委、中国のセキュリティー機器企業を調査 不正補

ビジネス

TikTok、簡易版のリスク評価報告書を欧州委に提
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 2

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の「爆弾発言」が怖すぎる

  • 3

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 4

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 5

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 6

    「なんという爆発...」ウクライナの大規模ドローン攻…

  • 7

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 8

    イランのイスラエル攻撃でアラブ諸国がまさかのイス…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 7

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 10

    ダイヤモンドバックスの試合中、自席の前を横切る子…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中