最新記事

韓国経済

苦境の韓国企業にようやく光明? 電気自動車用電池で中国規制に変化

2019年1月6日(日)13時50分

韓国企業を事実上、中国市場から締め出すこのような動きがあっただけに、中国政府の貿易・産業政策を巡る幅広い懸念が、米中政府が繰り広げる貿易紛争の軸になるのも無理はない。

「中国は韓国ライバル企業による参入を防ぐために補助金を用いて、中国企業が技術面で追いつく時間を稼いできた」と韓国電池産業協会でディレクターを務めるKoo Hoe-jin氏は語る。

EV用バッテリーに関する戦略についてMIITにコメントを求めたが、回答は得られなかった。

また、韓国企業に手痛い打撃を与えたのは、2016年以来140%近く急騰したコバルト価格だ。LG化学とサムスンSDIによれば、この価格急騰によって、バッテリー価格を原材料価格に連動させるための契約見直しを余儀なくされたという。

対照的に、中国の競合企業が受けた打撃は、はるかに小さかった。世界のコバルト精錬能力の半分を中国が占めており、世界のコバルトサプライチェーンに対する影響力を強めてきたからである。

中国のCATLはこうした要因にも助けられて、業界首位として長年君臨するパナソニックと肩を並べる水準にまで成長した。同社は最近、サプライヤーの多角化を図る自動車メーカーとの契約も獲得している。サムスンSDIの主要顧客であるBMWとの契約もその一例だ。

SNEリサーチによれば、CATLと、米著名投資家ウォーレン・バフェット氏の出資を受けるBYDとを合わせた世界市場のシェアは、10月までの1年間で3分の1にまで拡大した。2015年は18.2%だった。一方、同時期のLG化学とサムスンSDIを合わせたシェアは9.6%で、その伸びは1ポイントにも満たなかった。

パナソニックとは異なり、韓国企業は専属顧客を頼りにできない。韓国の主力自動車メーカーである現代自動車は、バッテリー駆動のEVよりも燃料電池車に力を注いでいる。

「韓国企業は、日中のライバル企業に挟まれてサンドイッチになっている。韓国企業のポジショニングが曖昧だ」。韓国の瑞靖大学校で教授を務めるPark Chul Wan氏はそう指摘した。

(翻訳:エァクレーレン)

Heekyong Yang and Yilei Sun

[ソウル/北京 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2018トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

20240521issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年5月21日号(5月14日発売)は「インドのヒント」特集。[モディ首相独占取材]矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディの言葉にあり

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

台湾の頼次期総統、20日の就任式で中国との「現状維

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部で攻勢強化 米大統領補佐官が

ワールド

アングル:トランプ氏陣営、本選敗北に備え「異議申し

ビジネス

日本製鉄副会長が来週訪米、USスチール買収で働きか
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバいのか!?

  • 3

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイジェリアの少年」...経験した偏見と苦難、そして現在の夢

  • 4

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 5

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 6

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 7

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 8

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 9

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 10

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 9

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 10

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 4

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中