最新記事

米中衝突

中国は「第三次大戦を準備している」

China Acts Like It’s ‘Preparing for World War III’

2019年1月31日(木)16時58分
ジェイソン・レモン

米政府の懸念は、中国政府が言うとおり「ヒステリー」に過ぎないのか?  China Daily/REUTERS

<中国がどんどん軍事力を増強しているのに、アメリカ人はアメリカは今も世界最強だと思い込んでいる>

まるで、「第三次大戦に向けた準備」のようだ──米上院軍事委員会の委員長を務めるジェームズ・インホフ上院議員(オクラホマ州選出、共和党)は1月29日、南シナ海における中国の行動についてこう言った。

インホフは上院情報特別委員会が開いた外国の脅威に関する公聴会で証言した際、アメリカの安全保障上の懸念として南シナ海で米中の緊張が高まっていることを挙げた

インホフが米海軍機関紙「ネイビー・タイムズ」に語ったところでは、「太平洋の同盟諸国と話をしても、将来は米中どちらにつこうかと考えているようにみえた」という。

さらに、アメリカの脅威となり得る中国の潜在能力に関して、米政府の懸念が国民に十分に共有されておらず、国全体が油断していることを危惧していると言った。太平洋におけるアメリカの絶対的優位は既に過去のものなのに、「米政府からのメッセージがきちんと伝わっていないのが心配だ」と、インホフは言う。

「第二次大戦以降、アメリカは万事において最強なのだと、有頂天でやってきた」

FBIも中国を名指しで警戒

政治家や情報機関の専門家は、アメリカの国内外で中国による脅威が迫っていると警戒を強めている。昨年12月には、米司法省が過去7年間で摘発した経済スパイ事件の90%に中国が関与していたことが、同省が米上院情報委員会に提出した報告書で明らかになった。

「中国は、アメリカの対敵情報活動が直面する最も広範かつ複雑な脅威となっている」と、クリストファー・レイFBI(米連邦捜査局)長官は昨年10月、米上院国土安全保障委員会で証言した。レイは昨年7月にも、FBIは中国が関与した経済スパイ事件を全米50州で捜査中だと言った。

中国が軍事拠点化を進める南シナ海では、米中が実際にぶつかるケースもたまに起きている。昨年9月には米イージス駆逐艦ディケーターが、中国軍の駆逐艦がわずか40メートルの距離まで異常接近したこともあった。

貿易面でも緊張は高まる一方だ。アメリカは中国の通信機器大手「華為技術(ファーウェイ・テクノロジーズ)」に対する圧力を強めている。米司法省は1月28日、ファーウェイが企業秘密を盗み、イラン制裁に違反する取引を行い、司法妨害したなどの罪状で、法人としてのファーウェイと副会長でCFO(最高財務責任者)の孟晩舟(マン・ワンジョウ)を起訴。中国が猛反発する孟の身柄引き渡しを求めている。

中国は、アメリカが中国企業を潰しにかかっているとして激しく非難。米政府の反中感情の発露を「ヒステリー」と一喝した。

(翻訳:河原里香)

202404300507issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年4月30日/5月7日号(4月23日発売)は「世界が愛した日本アニメ30」特集。ジブリのほか、『鬼滅の刃』『AKIRA』『ドラゴンボール』『千年女優』『君の名は。』……[PLUS]北米を席巻する日本マンガ

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アングル:「豪華装備」競う中国EVメーカー、西側と

ビジネス

NY外為市場=ドルが158円台乗せ、日銀の現状維持

ビジネス

米国株式市場=上昇、大型グロース株高い

ビジネス

米PCE価格指数、インフレ率の緩やかな上昇示す 個
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 3

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 4

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 5

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 6

    アカデミー賞監督の「英語スピーチ格差」を考える

  • 7

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 8

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 9

    大谷選手は被害者だけど「失格」...日本人の弱点は「…

  • 10

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 10

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈する動画...「吹き飛ばされた」と遺族(ロシア報道)

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中