最新記事

日本社会

日本の「テラハ」が描くリアリティー番組の未来

Reality TV Still Evolving

2019年1月30日(水)17時10分
ライアン・サクストン

池添はテラスハウスで自分の性的指向を自覚 (c)Fuji Television/EAST ENTERTAINMENT

<世界的に大ヒット中の『テラスハウス』最新シーズンに、LGBTが登場して分かったリアリティー番組の原点と理想>

日本のリアリティー番組『テラスハウス』が世界的なヒットになっている。米テレビ批評家トロイ・パターソンが、「自然を追うドキュメンタリー番組」に近いと表現するほど「素のまま」なところが、派手な演出に慣れた欧米の視聴者の目には新鮮に映っているらしい。

見ず知らずの男女がひとつ屋根の下で暮らしながら、夢や恋人を見つけていく『テラスハウス』は、12年に日本のフジテレビで放送がスタートし、15年からは動画配信サービスのNetflixが配信を開始。最新シーズンの『TERRACE HOUSE OPENING NEW DOORS』は、17年12月から現在まで放送が続いている。

その新シーズンに、初めてLGBT(性的マイノリティー)のメンバー、池添俊亮(しゅんすけ)が登場した(『テラスハウス』ではシーズン途中に順次メンバーが入れ替わる)。第32話から本格的に登場した池添は、『テラスハウス』に参加した理由を問われて、「自分はバイセクシュアルなのではないかと思う」と仲間に打ち明ける。だが、「まだ自分でもはっきり分からないから、男女6人がいるところに行けば分かるんじゃないかと思った」と語る。

これは日本の主要メディアでは、めったに見ることのない試みだ。というのも日本では、テレビどころか社会一般でも、LGBTを公言する人は極めて少ない。ある研究によると、「友達にLGBTを自認する人がいる」と答えた人は5%しかいなかった(アメリカでは55%)。

フツーのLGBTの姿

日本人が同性愛者を嫌っているというわけではなさそうだ。それどころか20~40歳の70%以上が同性カップルを支持しているという。だが、それならなぜ日本ではLGBTであることを公言している人が少ないのか。

米スキッドモア大学のマサミ・タマガワ教授は、17年に発表した論文「日本でカミングアウトすること」で、「日本社会の基礎は家族制度であり、同性愛嫌いを含め人々が自分の本音を言えるのは家庭だ」と指摘している。このため、社会一般でLGBTは「受け入れられている」ように見えるが、実のところ彼らは無視され、黙らされているにすぎないと指摘する。

日米両方のテレビ番組を見て育ったという日系アメリカ人のコウジの考えは少し違う。「自分の性的指向についての不安を(テレビ番組のような場所で)公然と打ち明けることは、日本に限らずどの国のリアリティー番組でも極めてユニークなのではないか」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

再送米PCE価格指数、3月前月比+0.3%・前年比

ワールド

「トランプ氏と喜んで討議」、バイデン氏が討論会に意

ワールド

国際刑事裁の決定、イスラエルの行動に影響せず=ネタ

ワールド

ロシア中銀、金利16%に据え置き インフレ率は年内
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 3

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 4

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 5

    アカデミー賞監督の「英語スピーチ格差」を考える

  • 6

    大谷選手は被害者だけど「失格」...日本人の弱点は「…

  • 7

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    「性的」批判を一蹴 ローリング・ストーンズMVで妖…

  • 10

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈する動画...「吹き飛ばされた」と遺族(ロシア報道)

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中