最新記事

南米

混迷のベネズエラを切り裂く2人の大統領

A New Day in Venezuela?

2019年2月1日(金)17時00分
キース・ジョンソン、ロビー・グレイマー(フォーリン・ポリシー誌記者)

アメリカは常に、ベネズエラの左派政府に強硬姿勢で臨んできた。トランプが大統領に就任してからは、ベネズエラの政府高官や企業を対象とする制裁措置を繰り出して、マドゥロ政権への圧力を強めている。さらなる経済的圧力をかければ、追い詰められたマドゥロにとどめを刺せるとみる向きは多い。

マドゥロを追いやるべく、米政権高官は1年近く前から「最終手段」を検討してきた。ベネズエラ経済の生命線である原油輸出に制裁を科すことだ。実施に踏み切れば政府の収入源を断てるが、一般市民の生活は輪をかけて苦しくなるだろう。

ある米上級高官は、グアイドが暫定大統領就任を宣言した1月23日、マドゥロが暴力で応じたり、誰であれ国会議員を標的にした場合には、「あらゆる選択肢を考慮する」と記者団に語った。

原油制裁という「鈍器」

原油輸出への制裁をめぐっては不安な点もある。アメリカはベネズエラの原油のお得意様なのだ。特にメキシコ湾岸にある製油所は、ベネズエラから大量の原油を購入してガソリンなどの製品に加工している。ベネズエラからの原油輸入の禁止は、米国内の製油所の首を絞めることになりかねず、ガソリン価格高騰を引き起こしかねない。

原油制裁という鈍器は有効かもしれないし、両国にとって逆効果になる可能性もある。米シンクタンク、民主主義防衛財団のシニアフェローのマシュー・ズワイグに言わせれば、「ローリスク・ハイリターン」な方法でマドゥロ政権に圧力をかけたいなら、既存の手法に倣うだけでよさそうだ。

米財務省は先日、ベネズエラの数少ない独立系放送局の1つを買収した企業幹部を制裁対象にし、放送局売却を解除の条件にした。この手のピンポイントの制裁を適切に実施すれば、マドゥロ一派を罰すると同時に、ある種の民主主義を回復できるだろうと、ズワイグは語る。

「体制の中枢を標的にし、彼らのカネと資産を取り上げること。それこそが効果的な方法だ」

From Foreign Policy Magazine

<本誌2018年02月05日号掲載>

※2019年2月5日号(1月29日発売)は「米中激突:テクノナショナリズムの脅威」特集。技術力でアメリカを凌駕する中国にトランプは関税で対抗するが、それは誤りではないか。貿易から軍事へと拡大する米中新冷戦の勝者は――。米中激突の深層を読み解く。

202404300507issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年4月30日/5月7日号(4月23日発売)は「世界が愛した日本アニメ30」特集。ジブリのほか、『鬼滅の刃』『AKIRA』『ドラゴンボール』『千年女優』『君の名は。』……[PLUS]北米を席巻する日本マンガ

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

EXCLUSIVE-グレンコア、英アングロへの買収

ワールド

中国軍機14機が中間線越え、中国軍は「実践上陸訓練

ビジネス

EXCLUSIVE-スイスUBS、資産運用業務見直

ワールド

ロシア産肥料を米企業が積極購入、戦費調達に貢献と米
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 2

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 3

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 4

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 5

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 6

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 7

    「TSMC創業者」モリス・チャンが、IBM工場の買収を視…

  • 8

    中国のコモディティ爆買い続く、 最終兵器「人民元切…

  • 9

    「複雑で自由で多様」...日本アニメがこれからも世界…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 8

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 9

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 10

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中