最新記事

動物

銃弾74発浴びたオランウータン容体安定 生息地ダム計画、環境団体が再提訴と中国銀行に交渉呼びかけ

2019年3月21日(木)20時45分
大塚智彦(PanAsiaNews)

鎖骨骨折の手術跡も痛々しいオランウータン「HOPE」。(c) Sumatran Orangutan Conservation Programme (SOCP) via Facebook

<緑豊かなインドネシアの密林で木々を自由に移動していたオランウータン。だが、彼らが安全に暮らせる場所は狭まりつつある>

インドネシアのスマトラ島アチェ州のプランテーションで保護された体に74発の空気銃の銃弾を受けたオランウータンはその後、専門の医師らによる治療を受けて容体は安定していることがわかった。

一方で別のオランウータンの種が生息する北スマトラ州で進むダム建設計画に関しては、インドネシアの環境団体が計画の中止を求めて上級裁判所に再び提訴するとともに資金援助している中国の銀行に交渉を呼びかける事態となっている。

インドネシアの雑誌「テンポ」(電子版)などによると、空気銃の弾丸や鋭い刃物による傷を負って保護されたメスのスマトラ・オランウータンは「スマトラ・オランウータン保護計画(SOCP)」の獣医らからなる専門チームによって集中治療と手術を受けた。最も深刻な外傷だった肩の鎖骨骨折の手術は約3時間にわたり、体内に残された74発の銃弾は感染症予防のためうちわずか7発しか摘出することができなかったという。

「ホープ(希望)」と命名

SOCPのヤニー・サラスワティ獣医はAP通信に対し「鎖骨の手術に加えて脚や腕の外傷の治療を優先した。症状は安定しているものの、感染症予防とリハビリのためにさらに集中的な治療と検査が必要だ」としたうえで「銃弾で両目も失明状態であり、野生に戻れる可能性は低い」との見方を改めて明らかにした。

このメスのオランウータンは保護団体のスタッフらによって「ホープ(希望)」と名付けられたという。

医療チームでは時間をかけてホープの体内に残る銃弾の除去を進め、その後リハビリに必要な治療、体力の回復を図りたいとしているが、ヤニー医師ら医療スタッフによると「身体的だけでなく精神的なダメージもケアする必要がある」とホープのメンタルケアにも配慮する方針を示している。

3時間にわたる手術が行われたオランウータン「HOPE」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国スマホ販売、第1四半期はアップル19%減 20

ビジネス

英インフレ率目標の維持、労働市場の緩みが鍵=ハスケ

ワールド

ガザ病院敷地内から数百人の遺体、国連当局者「恐怖を

ワールド

ウクライナ、海外在住男性への領事サービス停止 徴兵
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 2

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の「爆弾発言」が怖すぎる

  • 3

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親会社HYBEが監査、ミン・ヒジン代表の辞任を要求

  • 4

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 5

    「なんという爆発...」ウクライナの大規模ドローン攻…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    ロシア、NATOとの大規模紛争に備えてフィンランド国…

  • 9

    イランのイスラエル攻撃でアラブ諸国がまさかのイス…

  • 10

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 7

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 8

    ダイヤモンドバックスの試合中、自席の前を横切る子…

  • 9

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 10

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中