最新記事

動物

絶滅危惧種を保護するためにはネコも駆除せよ!

Cats Should Be Killed to Save Endangered Species, Scientists Say

2019年3月29日(金)14時00分
カシュミラ・ガンダー

外来動物は固有種にとっての脅威(画像は「猫島」として有名な愛媛県・青島の猫たち) Thomas Peter-REUTERS

<世界の島々に絶滅危惧種の動物が生息しているケースは多いが、ネコやイヌ、ネズミなどの外来動物を駆除して絶滅危惧種を守るべきという研究結果が発表された>

世界の島々で野生化したネコやイヌは、彼らがエサにしている生物を絶滅の危機から救うために、駆除する必要がある――と自然保護の研究者たちが主張している。

今週27日、論文掲載サイト「PLOS ONE」で発表された論文の研究チームによると、世界中の169の島からネズミ、マングース、ブタ、ヤギ、ネコ、イヌといった外来動物を根絶すれば、世界の絶滅危惧種の9.4%を保護できる、と言う。

論文によると、世界に46万5000ある島々は地球の陸地の約5.3%にしかならないが、西暦1500年以降に絶滅したことがわかっている鳥類や哺乳類、両生類、爬虫類といった生物の75%の生息地だった。そして現在も、絶滅危惧種の36%がこれらの島々に生息している。

この結論を導き出すために、研究チームはIUCN(国際自然保護連合)のレッドリストで「深刻な危機」または「危機」にある絶滅危惧種としてあげられている1184種の固有種の脊椎動物、そして世界中の1279の島に生息する184の外来の哺乳類のデータを調べた。

そして、外来の哺乳類を減らすことが固有種の保護につながる292の島のリストを作成した。このうち外来動物の駆除を早ければ2020年に開始できる34カ国の107の島が、特に重点ポイントとして選ばれている。

ネズミがウミガメの卵を

メキシコ西方沖のソコロ島では、ネコやネズミを早急に排除して自然環境を回復させれば、野鳥のマネシツグミ、オオセグロミズナギドリや島固有のヤモリを絶滅から救うことができる。

メキシコ西部バハカリフォルニア半島の突端サンホセデルカボ地域では、イヌやヤギ、ネコの駆除で固有種のカンガルーネズミ、ブラシネズミを絶滅から救える。

また南大西洋・英領セントヘレナのゴーフ島では、ネズミの駆除で野鳥のゴーフフィンチ、ゴウワタリアホウドリ、ススイロアホウドリ、ニシキバナアホウドリ、ズキンミズナギドリを救える。

昨年、鳥類の専門誌に掲載された研究でも、南大西洋の島々で巨大なネズミが海鳥の生息地を破壊していることが報告されている。

自然保護団体「アイランド・コンサベーション」のメンバーで研究チームの1人、ニック・ホームズ博士は、「外来哺乳類の駆除は、島の固有種の主要な脅威を取り除いて絶滅から救い、生物多様性を維持するうえで有効な手段だ」とコメントしている。

同団体の調査によれば、仏領ポリネシアのテティアロア島では、ウミガメの卵を外来のネズミが食べてしまうために、ウミガメが絶滅に危機に瀕している。

20240514issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年5月14日号(5月8日発売)は「岸田のホンネ」特集。金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口……岸田文雄首相が本誌単独取材で語った「転換点の日本」

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=ダウ6連騰、S&Pは横ばい 長期金利

ビジネス

エアビー、第1四半期は増収増益 見通し期待外れで株

ビジネス

NY外為市場=ドル上昇、金利見通しを巡り 円は3日

ビジネス

EXCLUSIVE-米検察、テスラを詐欺の疑いで調
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    「自然は残酷だ...」動物園でクマがカモの親子を捕食...止めようと叫ぶ子どもたち

  • 3

    習近平が5年ぶり欧州訪問も「地政学的な緊張」は増すばかり

  • 4

    いま買うべきは日本株か、アメリカ株か? 4つの「グ…

  • 5

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 6

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 7

    迫り来る「巨大竜巻」から逃げる家族が奇跡的に救出…

  • 8

    イギリスの不法入国者「ルワンダ強制移送計画」に非…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    ケイティ・ペリーの「尻がまる見え」ドレスに批判殺…

  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 5

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 6

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 7

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 8

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 9

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前…

  • 10

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 9

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 10

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中