最新記事

台湾海峡

中台緊張!は「アメリカのせいだ」

China Media Blames U.S. for Stirring Trouble in Taiwan

2019年4月2日(火)13時30分
デービッド・ブレナン

3月31日に台湾海峡の中間線を超えた殲(J)11戦闘機と同型機 REUTERS/U.S. Navy

<中国軍が台湾に対して軍事力を誇示しているのは「手を引けというアメリカへのメッセージだ」>

中国軍の戦闘機が中国本土と台湾を隔てる台湾海峡の実質的な停戦ラインとされている「中間線」を越え、国際社会が身構えるなか、中国共産党機関紙の人民日報系のタブロイド紙である環球時報は4月1日、中国側は確信犯的な声明を発表した。

3月31日、中国空軍の戦闘機「殲11」2機が中間線を越えて、一時台湾本島側の空域に入り、10分間ほど飛び続けた。台湾側からも戦闘機数機が緊急発進をかけ、一時海峡は緊張に包まれた。台湾側は中国が「無謀で挑発的な行動」だと非難し、「地域の安全と安定に重大な影響を及ぼす」ものだと警告した。

環球時報は、匿名のアナリストの声明を引用し、台湾独立を支持するアメリカ政府が台湾海峡で実施した「航行の自由」作戦への返答だった可能性があるとの見方を示した。

「中華民国」の正式名称を持つ台湾は、中国の内戦(国共内戦:中国共産党と中国国民党が繰り広げた内戦)で共産党が勝利した後に中国本土から台湾に移り、70年以上にわたって独立国家として機能している。だが中国政府は今も同島を中国の一部と見なしており、「ひとつの中国」原則の下で、外交的なものであれ軍事的なものであれ、あらゆる手段を講じて中台統一の姿勢を維持している。

「アメリカが落ち着けば台湾も落ち着く」

台湾の独立問題は何十年も前から米中間の外交上の火種となっており、米議会は台湾の主権を守るために武器売却や軍の派遣・駐留などの支援をしてきた。

「中国本土の匿名のある台湾問題専門家」は環球時報に対し、中台間の緊張が続いているのは、アメリカ政府がこの問題に関与しているからだと指摘した。「実際のところ、台湾にはもはや標的にする価値はない」とこの専門家は語った。「中国がその軍事力を示しているのは、アメリカに対して、引き際を思い知らせるためだ。台湾が問題を起こすのは、アメリカがそれを支持するからだ。アメリカが落ち着けば台湾も落ち着くだろう」

中台間の中間線は心理的なラインにすぎず、中国政府は線の両側が中国の領土だと考えているとつけ加えた。

米海軍は2019年に入ってから3回にわたって台湾海峡に艦船を派遣しており、最近では3月24日に作戦実行が確認されている。台湾の蔡英文総統は、中国は「ひとつの中国」の原則を維持する姿勢を示すために、台湾海峡での哨戒活動も増やしていると警告している。

ドナルド・トランプ米政権は、F16戦闘機を台湾に売却することを暗黙に了承したと報じられている。ブルームバーグによれば、これが実現すればアメリカが台湾に新型戦闘機を売却するのは1992年以来のこととなり、また台湾独立を支持するトランプ政権の直接的な意思表明となる見通しだ。

米中関係は、大きな犠牲を伴う貿易戦争や南シナ海の領有権問題をめぐって既に緊張状態にある。中国はアジア諸国と領有権を争う南シナ海を実効支配するため海軍基地のネットワークを建設している。これに対してアメリカは航行の自由作戦を実行し、米軍の戦闘機や艦船を同海域に派遣しており、中国がこれに抗議している。

202404300507issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年4月30日/5月7日号(4月23日発売)は「世界が愛した日本アニメ30」特集。ジブリのほか、『鬼滅の刃』『AKIRA』『ドラゴンボール』『千年女優』『君の名は。』……[PLUS]北米を席巻する日本マンガ

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

韓国GDP、第1四半期は前期比+1.3%で予想上回

ビジネス

日経平均は反落で寄り付く、米金利高止まりを警戒

ワールド

メキシコ大統領選、与党シェインバウム氏が支持リード

ワールド

ウクライナ、国外在住男性のパスポート申請制限 兵員
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 3

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗衣氏への名誉棄損に対する賠償命令

  • 4

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 5

    マイナス金利の解除でも、円安が止まらない「当然」…

  • 6

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 7

    ワニが16歳少年を襲い殺害...遺体発見の「おぞましい…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ケイティ・ペリーの「尻がまる見え」ドレスに批判殺…

  • 10

    イランのイスラエル攻撃でアラブ諸国がまさかのイス…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 7

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 8

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中