最新記事

ベネズエラ

ベネズエラ「分捕り合戦」で気になる中国の暗躍

Iran Follows Russia to Venezuela, But U.S. Fears China

2019年4月10日(水)16時16分
トム・オコナー

中国からベネズエラの首都カラカス郊外の空港に到着した支援の医薬品を積み下ろす労働者(19年3月29日) Manaure Quintero- REUTERS

<マドゥロ社会主義独裁政権をめぐってアメリカとイラン、ロシアの対立が先鋭化しているが、アメリカが最も神経を尖らせるのは中国が大盤振る舞いしているという情報だ>

ベネズエラの社会主義政権を倒そうとするアメリカに対し、ロシアとイランは現政権を支持し、関係を強化しようとしている。だが米国防総省が今最も恐れているのは中国の存在だろう。

ロシアが3月に航空機と最大100名の部隊をベネズエラの首都カラカスに派遣すると決定し、ベネズエラのホルヘ・アレアサ外相が4月8日の記者会見で「ロシアとの軍事技術協力を継続する」と言ったのを聞き、米政府は動揺した。アレアサ外相は中東を訪問し、シリアとレバノンからニコラス・マドゥロ大統領への支持を取り付けて戻ったばかり。その上彼は、イランの代表団もイランの「マハン航空」で8日にカラカスに到着したことを報道陣に伝えた。

マハン航空は民営航空会社だが、ドナルド・トランプ大統領がテロ組織と指定したイランの精鋭軍事部隊、イラン革命防衛隊に「財政的、物質的、技術的支援を提供した」ことから、2011年にアメリカの制裁対象になっている。その航空機でやってきたのは、アメリカに対する挑発だ。

それでも、クレイグ・ファラー米南方軍司令官がより大きな懸念を抱くのは、ベネズエラにおける体制転換を妨げるもうひとつの勢力、中国のほうだという。

「世界の民主主義と人々の生活にとって最大の脅威となっているのは、中国だと思う」とファラーはフォーリン・ポリシー誌に語った。そして、「中国ほど影響力が大きい勢力は中南米にはない。中国とキューバが、共にニコラス・マドゥロとその取り巻きの運命を支配している」

武器売却やインフラ支援

米政府は近年、中国の国外での活動、特に南シナ海での軍事行動とアジアからアフリカ、ヨーロッパ、中南米まで世界各地で行っている莫大な投資に警戒心をつのらせている。マイク・ペンス副大統領は今週初めの会合で、米国主導のNATOにとって中国がロシアをしのぐ大きな脅威となる可能性を示唆した。

中国外務省の耿爽報(ゲン・シュアン)報道官は、中国がベネズエラに最大120人の軍隊を派遣したという報道を否定した。だが中国は6億1500万ドル以上の武器をベネズエラに売ったとも報じられている。また大停電を起こしたベネズエラの送電網の再建にも援助を申し出ている。

ベネズエラでは3月に各地で大規模停電が発生し、国民生活にたいへんな被害を与えた。マドゥロはこの大災害はアメリカの策略だと非難。野党指導者のフアン・グアイド国会議長と真っ向から対立している。

1月に暫定大統領就任を自ら宣言したグアイドとその支持者らは、マドゥロが不当に権力にしがみついていると主張、そして史上最悪とも言われるハイパーインフレを引き起こした経済運営の失敗を非難する。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米アトランタ連銀総裁、インフレ進展停滞なら利上げに

ワールド

多国間開発銀の改革計画、10月G20会合で議論=ブ

ビジネス

ソニー、米パラマウント買収交渉に参加か アポロと協

ビジネス

ネットフリックス、1─3月加入者が大幅増 売上高見
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の衝撃...米女優の過激衣装に「冗談でもあり得ない」と怒りの声

  • 3

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離れ」外貨準備のうち、金が約4%を占める

  • 4

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 5

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 6

    「イスラエルに300発撃って戦果はほぼゼロ」をイラン…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 9

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 10

    ヨルダン王女、イランの無人機5機を撃墜して人類への…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体は

  • 4

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 5

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 9

    帰宅した女性が目撃したのは、ヘビが「愛猫」の首を…

  • 10

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中