最新記事

中東

サウジのタンカーと石油施設にドローン攻撃? イランに同調・支援受ける勢力か

2019年5月15日(水)12時45分

5月14日、サウジアラビア政府は、首都リヤドの約320キロ西に位置する石油パイプラインの圧送(ポンプ)施設2カ所がドローンによる攻撃を受けたと明らかにした。写真は攻撃を受けた船。アラブ首長国連邦のフジャイラの港で13日撮影(2019年 ロイター/Satish Kumar)

サウジアラビア政府は14日、首都リヤドの約320キロ西に位置する石油パイプラインの圧送(ポンプ)施設2カ所がドローンによる攻撃を受けたと明らかにした。一方、米軍は、イランを後ろ盾とする勢力がイラク駐留米部隊に対する脅威になっている可能性に警戒感を示した。

2日前にはサウジの石油タンカーがアラブ首長国連邦(UAE)沖で攻撃を受けている。米国とイランの緊張が高まる中で米国と同盟関係にあるサウジのタンカーなどが破壊行為の標的となったため、米国とイランが軍事衝突に近づいているのではないかとの懸念が強まった。

ただ、トランプ米大統領はこの日、イランによる攻撃あるいは核開発の加速があった場合に備え、米政権が中東に最大12万人の部隊を派遣する軍事計画を検討しているとする米紙ニューヨーク・タイムズ(NYT)の報道を否定。

大統領は記者団に、報道は「フェイク(偽)ニュース」だとして部隊派遣は計画していないと表明。「このような計画が必要にならないことを願う。実際にそうなったとしても、報道とは比べようもないほど大規模な部隊を送ることになるだろう」と述べた。

イランの最高指導者ハメネイ師は、同国が米国と戦争を始めることはないと言明。国営テレビによると、「戦争が始まることはない。イランはレジスタンス(抵抗)の道を選んだ」と述べた。また、2015年のイラン核合意について米国と交渉しない意向も改めて示した。

ただ、米軍はこの日、イラン傘下の勢力がイラク駐留米部隊に対する差し迫った脅威となっている可能性に触れ、警戒態勢を強めていると明らかにした。

イラクとシリアで過激派組織「イスラム国」(IS)の掃討にあたっている米主導有志国連合の英軍副指揮官がイラン傘下の勢力による脅威は高まっていないと発言したことについて、米中央軍のビル・アーバン報道官は、米国や同盟国の情報活動で特定された確実な脅威と矛盾していると説明した。

情報活動に詳しい米当局者は、サウジの石油タンカーが攻撃を受けた事件について、米当局はイラン軍が直接関与したというより、イランに同調するあるいは支援を受けている勢力が実施した可能性があるとみていると明らかにした。

同当局者はイエメンのイスラム教シーア派武装組織「フーシ派」やイランを後ろ盾とするイラクのシーア派武装勢力による犯行の可能性があるが、明確な証拠はないとした。

ただ、イランは関与を否定。ザリフ外相は米政府内の「過激主義的」な複数の人物が危険な政策を推進していると主張した。

フーシ派のテレビ局は、イエメンでの「継続的な武力侵略と封鎖」に対応し、サウジの「極めて重要な」施設にフーシ派がドローン攻撃を実施したと伝えている。

米政府は今月、イラン産原油の禁輸措置について、日本を含む8カ国・地域に対する適用除外措置を打ち切った。また、「イラン政府による軍事的脅威」の兆しがあるとして、中東への空母打撃群と爆撃部隊の派遣を決めており、イランへの圧力を強めていた。



[リヤド/ドバイ 14日 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2019トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

202404300507issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年4月30日/5月7日号(4月23日発売)は「世界が愛した日本アニメ30」特集。ジブリのほか、『鬼滅の刃』『AKIRA』『ドラゴンボール』『千年女優』『君の名は。』……[PLUS]北米を席巻する日本マンガ

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米PCE価格指数、3月前月比+0.3%・前年比+2

ワールド

ベトナム国会議長、「違反行為」で辞任 国家主席解任

ビジネス

ANAHD、今期18%の営業減益予想 売上高は過去

ワールド

中国主席「中米はパートナーであるべき」、米国務長官
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 3

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 4

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP…

  • 5

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 6

    未婚中高年男性の死亡率は、既婚男性の2.8倍も高い

  • 7

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 8

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこ…

  • 8

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 9

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中