最新記事

フィリピン

比ドゥテルテ、産廃ゴミ回収の約束守らぬカナダに激怒? 大使と領事に帰国命令

2019年5月16日(木)20時30分
大塚智彦(PanAsiaNews)

効果的だったドゥテルテ流の強硬策

フィリピン外務省では15日の期限が過ぎたものの新たな期限を設定することはせずに、カナダ側が合意に基づいてコンテナを早急に回収するよう改めて求めている。

ただ、一部報道ではカナダ駐在のフィリピン大使は5月13日に行われたフィリピン中間選挙に関連して、カナダ国内で在外投票された票をフィリピン選挙管理委員会に提出するため、この時期に本国へ一時帰国する予定がもともとあったとも伝えられている。

このため領事召還は別にして「大使召還」はドゥテルテ大統領お得意の外交的ポーズの可能性もあるとの指摘も出ている。

大統領府のサルバドール・パネロ報道官は15日にはフィリピン大使や領事の召還には触れずに「外務省の説明によると、手続き上の問題で(カナダ側の)回収が少し遅れている。しかし準備は整っており、大事なことは回収が確実に行われるかどうかということだ」との立場を示していた。パネロ報道官は回収の遅れが「2から3週間になる」としていた。

その後外務省による大使、領事召還という事態を受けてパネロ報道官は16日には「フィリピン政府のこのゴミ問題に対する毅然として姿勢を示すものだ」としてカナダ政府に深刻に受け止めるよう求め「さらなる遅延はさらなる外交団の召還という事態を招くことになるだろう」と述べてカナダ政府に警告、早期回収を促した。

今回のカナダからのゴミ輸出問題は、ドゥテルテ大統領の"宣戦布告"発言をきっかけにマスコミや国民、国際社会の関心が一気に高まり、それを背景にカナダ政府に圧力をかけたことが功を奏して早期解決の道筋が見えてきたと言える。

ここへきて回収期限が守られなかったことで大使、領事召還という「新たなカード」を突きつけてさらに早期の回収に圧力をかけているフィリピン政府。

カナダ政府がドゥテルテ大統領の「攻勢一辺倒」の手法に屈したような展開に、国民の間ではさらにドゥテルテ人気が高まる結果となっている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アングル:「豪華装備」競う中国EVメーカー、西側と

ビジネス

NY外為市場=ドルが158円台乗せ、日銀の現状維持

ビジネス

米国株式市場=上昇、大型グロース株高い

ビジネス

米PCE価格指数、インフレ率の緩やかな上昇示す 個
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 4

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」…

  • 5

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 6

    アカデミー賞監督の「英語スピーチ格差」を考える

  • 7

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 8

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 9

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 10

    大谷選手は被害者だけど「失格」...日本人の弱点は「…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 10

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈する動画...「吹き飛ばされた」と遺族(ロシア報道)

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中