最新記事

英政治

次期イギリス首相を狙う11人の下馬評は

Who Will Replace Theresa May?

2019年6月15日(土)13時40分
ジョシュア・キーティング

ジョンソンは人気はあるが、権力目当ての日和見主義者ともいわれる HANNAH MCKAYーREUTERS

<ポスト・メイを争う保守党党首選は乱戦に――候補者のブレグジットへの立場とブックメーカーのオッズを一挙紹介>

ブレグジット(イギリスのEU離脱)をめぐる混乱の責任を取る形で、テリーザ・メイ英首相が5月24日に辞任を表明した。すると、ここ数カ月ひそかに繰り広げられていた後継者をめぐる闘いが、いきなり表面化した。

総選挙が行われるわけではない。支持率が低迷気味の与党・保守党で、いま選挙を望む議員などいない。あくまで保守党の党首選だ。しかし、結果的には首相を選ぶ選挙になる。

メイは6月7日に保守党党首を辞任したが、首相の座には後継者が決まるまでとどまる。この記事を書いている時点で、党首選には11人が名乗りを上げている。10日の立候補締め切りまでに、まだ増える可能性もある。

党首選ではまず保守党議員が何度も投票を繰り返し、候補者を2人に絞る。その後、党員全員でどちらかを選ぶ。

党としては議会が閉会する7月下旬までに決着をつけたい考えだ。その間にも、イギリスがEUを離脱する期限の10月31日は刻々と近づいてくる。既にイギリスは、この期限を2度にわたって延長した。

出馬を表明した政治家らが提案するブレグジット対策は、なんとも幅広い。離脱期限の再々延期、国民投票の再実施、合意なき離脱に踏み切る――とさまざまだ。もちろんブレグジット以外にも考慮しなくてはならない政治的な問題が山積している。

現在出馬を表明している候補11人をそれぞれのブレグジット支持度によって紹介しよう。当選のオッズは、ブックメーカーのラッドブロークスが6月5日に発表したもの。

【離脱積極派】

■ボリス・ジョンソン(前外相)
▼オッズ:0.8倍

ジャーナリストからロンドン市長へ、さらには外相も務めたジョンソンは、今のところ政界筋からもブックメーカーからも本命とみられている。

10月31日まではEUとの新たな離脱協定の交渉を試みるが、合意の有無にかかわらず、EUからの離脱を強行する考えだ。

ジョンソンはブレグジットの是非を問う国民投票の前に、離脱派の旗振り役を務めていただが、メイの離脱協定案に反対して閣僚を辞任。ブレグジット推進派とはいえ、他の社会・経済的問題についての立場は仲間たちよりもやや穏健だ。

支持者がジョンソンを推すのには大きな理由がある。ブレグジット党のナイジェル・ファラージュ党首や労働党のジェレミー・コービン党首といった野党指導者に対抗できるポピュリスト的なリーダーが必要だと考えるからだ。

ジョンソンのマイナス面は、権力を手にするためなら何でもするし、どんなことでも言う極端な日和見主義者だという点に尽きる。

一般党員には非常に人気があり、決選投票まで残れば勝利は確実だろう。しかし残念ながら、仲間の議員からは嫌われている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米PCE価格指数、3月前月比+0.3%・前年比+2

ワールド

米中外相会談、ロシア支援に米懸念表明 マイナス要因

ワールド

ベトナム国会議長、「違反行為」で辞任 国家主席解任

ビジネス

ANAHD、今期18%の営業減益予想 売上高は過去
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 3

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 4

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP…

  • 5

    未婚中高年男性の死亡率は、既婚男性の2.8倍も高い

  • 6

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 7

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 8

    アカデミー賞監督の「英語スピーチ格差」を考える

  • 9

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 10

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこ…

  • 8

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 9

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中