最新記事

セキュリティ

MITなど米大学に寄りそう危険なパートナー 中国AI監視企業が資金援助

2019年6月20日(木)11時37分

米マサチューセッツ工科大学(MIT)と、少なくとももう1校の大学が、中国新疆ウイルグル自治区の警察当局と取引のある中国の人工知能(AI)関連企業と研究パートナーシップを結んでいたことが分かった。写真ば米マサチューセッツ州ケンブリッジのMITで2018年11月撮影(2019年 ロイター/Brian Snyder)

米マサチューセッツ工科大学(MIT)と、少なくとももう1校の大学が、中国新疆ウイルグル自治区の警察当局と取引のある中国の人工知能(AI)関連企業と研究パートナーシップを結んでいたことが分かった。

同自治区では、当局によるウイグル族取り締まりが国際的な非難の的となっている。

2016年の政府調達発表によると、中国音声認識AI大手の科大訊飛(アイフライテック)の子会社が、同自治区カシュガルの警察が調達した声紋収集システム25機の単独納品元だった。

同社の別の子会社は、同自治区にある刑務所運営機関と「戦略的協力の枠組み合意」に署名していたことが、同子会社が2017年5月に無料メッセージアプリ「微信(ウィーチャット)」に投稿した内容から判明した。

中国当局は、声紋認識技術を使って人々を追跡し特定することができると、人権活動家は指摘する。

これらの大学が、アイフライテックの技術開発に直接貢献したり、同自治区での使用を念頭に大学の研究が行われたことを示す証拠は得られていない。

それでも一部の米大学は、米中貿易摩擦や米政府による中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)への締め付け、また同自治区での人権侵害報道を受けて、中国テクノロジー企業との協力関係を再点検している。

例えば、MITは4月、米政府が安全保障上のリスクと位置付けるファーウェイや中興通訊(ZTE)との協力を打ち切った。カリフォルニア州立大バークレー校などの大学も、ファーウェイが出資する全ての研究協力を停止した。

アイフライテックの担当者は、「一部の協力や内容は、安全保障に関連がある」とした上で、MITでの研究は「AIを使って美しい世界を作るという共通の理解に基づくものだった」と、ウィーチャット経由でロイターにコメントを寄せた。また、アイフライテックは「社会的に責任ある企業だ」と述べた。

MITは昨年、同大の著名なコンピューター科学・人工知能研究所(CSAIL)が行う研究プロジェクト3件に、アイフライテックから資金提供を受ける5年契約に署名した。それらのプロジェクトは、ヘルスケア部門でのAI活用、言語認識、そしてCSAILが「よりヒューマンな」と表現したAI開発だ。

「CSAILは、これらを巡る懸念について認識しており、検討を行った。しかし、これら3プロジェクトの研究成果はすべて科学文献で公表される可能性があることや、即座に応用されるとは想定されていないことを踏まえ、進めるのが適当と判断した」。CSAILの広報担当者は、ロイターにメールで回答した。

MITのランドール・デイビス教授は、自身のAI分析を使った認知機能低下を診断するヘルスケア関連研究について、アイフライテックが妨害することはなかったと語る。

「顔の表情で、話している内容や本当に欲しがっているものを理解できるようなシステムを求めている」と、デービス教授。アイフライテック側から研究室への人員派遣はなく、研究成果に対して独占的なアクセスを与えていないと説明する。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米・イランが間接協議、域内情勢のエスカレーション回

ワールド

ベトナム共産党、国家主席にラム公安相指名 国会議長

ワールド

サウジ皇太子と米大統領補佐官、二国間協定やガザ問題

ワールド

ジョージア「スパイ法案」、大統領が拒否権発動
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバいのか!?

  • 3

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイジェリアの少年」...経験した偏見と苦難、そして現在の夢

  • 4

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 5

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 6

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 7

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 8

    「裸に安全ピンだけ」の衝撃...マイリー・サイラスの…

  • 9

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 10

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 8

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 9

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中