最新記事

ロシア疑惑

ロシア疑惑「終結」、トランプ弾劾の機運に拍車が掛かっている

2019年6月3日(月)14時15分
ラムジー・タッチベリー

MIKE BLAKE-REUTERS

<沈黙を続けてきたムラー特別検察官が捜査終結と辞職を表明、議会にボールを投げたとも取れる発言をした。トランプは弾劾されるのか>

トランプ米大統領のロシア疑惑捜査に任命されて以降、2年以上沈黙を続けてきたムラー特別検察官。彼が5月29日に初めて記者会見を開き(写真)、捜査終結と辞職を表明したことで、民主党内ではトランプ弾劾を求める機運に拍車が掛かっている。

司法省で行われた会見でムラーは、「大統領が明らかに罪を犯していないという確信があれば、私たちははっきりそう述べたことだろう」と語った。だが司法省の指針として、現職大統領を起訴することは「選択肢になかった」と言う。

その上で「大統領が罪を犯したかどうか私たちは結論を出していない」と指摘。さらに、「合衆国憲法は、現職大統領を不正行為で正式に起訴するために刑事司法制度以外の手続きを求めている」と、議会にボールを投げたとも取れる発言をした。

ムラー発言で、民主党はかつてなく分裂している。ムラーの発言を契機に今こそトランプの弾劾手続きを進めるべき、との声が一部に広がっているのだ。

安全保障専門の弁護士ブラッドリー・モスは、ムラーの発言は「間違いなく」議会に対して行動を呼び掛けたものだと言う。「司法省ではなく政治部門で解決すべき、というわけだ」

下院司法委員会のバル・デミングスは、ムラーが「自らできなかったことを私たちに求めている──大統領に責任を取らせることだ」とツイート。同委員会のナドラー委員長は「あらゆる選択肢が残されており、どれも除外すべきでない」と話した。

だが、ペロシ下院議長ら民主党幹部は、次期大統領選で民主党に有利に働かない恐れがあることから、弾劾に慎重な姿勢を貫いてきた。ムラーの会見後にペロシは、民主党下院議員235人のうち「弾劾を叫んでいるのは35~38人ほどだと思う。だが私たちは正しい結果が得られる方法を取る」と話したが......。

【参考記事】「トランプ大統領が潔白とは言っていない」──ロシア疑惑のムラー特別捜査官が沈黙破る

<2019年6月11日号掲載>

20190611issue_cover200.jpg
※6月11日号(6月4日発売)は「天安門事件30年:変わる中国、消せない記憶」特集。人民解放軍が人民を虐殺した悪夢から30年。アメリカに迫る大国となった中国は、これからどこへ向かうのか。独裁中国を待つ「落とし穴」をレポートする。


202404300507issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年4月30日/5月7日号(4月23日発売)は「世界が愛した日本アニメ30」特集。ジブリのほか、『鬼滅の刃』『AKIRA』『ドラゴンボール』『千年女優』『君の名は。』……[PLUS]北米を席巻する日本マンガ

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米GDP、第1四半期は+1.6%に鈍化 2年ぶり低

ビジネス

ロイターネクスト:米第1四半期GDPは上方修正の可

ワールド

プーチン氏、5月に訪中 習氏と会談か 5期目大統領

ワールド

仏大統領、欧州防衛の強化求める 「滅亡のリスク」
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP非アイドル系の来日公演

  • 3

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗衣氏への名誉棄損に対する賠償命令

  • 4

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 5

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 6

    未婚中高年男性の死亡率は、既婚男性の2.8倍も高い

  • 7

    やっと本気を出した米英から追加支援でウクライナに…

  • 8

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 9

    自民が下野する政権交代は再現されるか

  • 10

    ワニが16歳少年を襲い殺害...遺体発見の「おぞましい…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこ…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 9

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中