最新記事

韓国

韓国は米中の板挟みに ファーウェイ排除で韓国経済は大打撃

2019年6月4日(火)16時30分

5月30日、中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)に対して米国が事実上の禁輸措置を講じた数日後、中国深セン近郊にある同社本社を、韓国の政治家や経済人など100人以上の一行が訪問した。写真はファーウェイのロゴ。中国深センの同社本部で29日撮影(2019年 ロイター/Jason Lee)

中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)に対して米国が事実上の禁輸措置を講じた数日後、中国深セン近郊にある同社本社を、韓国の政治家や経済人など100人以上の一行が訪問した。

サムスン電子などの企業幹部が、ファーウェイの次世代高速通信規格「5G」機器を使った高速ロボティクスのデモやスマートシティのシミュレーションを見学した。アジア4位の経済を誇る韓国と中国のテクノロジー連携の強化を目的としたイベントの一環で、韓国政府も支援していた。

だが、開催直前となる5月中旬に、米政府が自国IT・通信企業に対してファーウェイとの取引禁止を決め、世界中の企業にも後に続くよう促したことが、イベントに影を落としていた。

米国による「ファーウェイ封じ込め」とその背景にある米中貿易戦争は、輸出依存国の韓国を、再び苦境に追い込んでいる。最重要の同盟国と、最大の貿易相手国との板挟みに陥ったのだ。

世界的な主要テクノロジー企業が次々とファーウェイに対する部品やソフトウエアの提供を取りやめ、複数の通信事業者がファーウェイ製スマートフォンの新製品発売を先送りした。

だが韓国の業界幹部や政治家は、中国とこれまで通りのビジネスを続ける以外に選択肢はないと話す。

韓国テクノロジー最大手のサムスンにとって、米政府によるファーウェイ締め付けで受ける恩恵よりも、ビジネス喪失による打撃の方が大きい、と専門家は指摘する。

サムスンは、ファーウェイからスマホと通信機器のシェアを奪える可能性があり、サムスン株は米政府の発表以来わずかに上昇している。また、米中貿易戦争が、半導体やスマホ画面分野での新興中国メーカーの台頭を妨げるかもしれない。

だがファーウェイは、サムスン製半導体メモリーの最大顧客に含まれる。また、韓国企業は中国に複数の生産拠点を構え、そこから多数の顧客に製品を届けている。ファーウェイの本社訪問には、サムスンの尹富根(ユン・ブグン)副会長も参加した。

「両社は競争関係にあるが、重要なパートナーでもある」。今回の訪問団の1人だった与党・韓国民主党のミン・ビョンド議員はこう話す。韓国企業には、ファーウェイとの取引継続に代わる「単純な選択肢はない」とロイターに語った。サムスンは、コメントしなかった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

台湾の頼次期総統、20日の就任式で中国との「現状維

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部で攻勢強化 米大統領補佐官が

ワールド

アングル:トランプ氏陣営、本選敗北に備え「異議申し

ビジネス

日本製鉄副会長が来週訪米、USスチール買収で働きか
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバいのか!?

  • 3

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイジェリアの少年」...経験した偏見と苦難、そして現在の夢

  • 4

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 5

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 6

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 7

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 8

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 9

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 10

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 9

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 10

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 4

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中