最新記事

イラン

イランはなぜ米軍ドローンを撃墜したか その真の標的

2019年6月24日(月)11時00分
キース・ジョンソン

イラン近海で米軍がドローンを飛ばしたのは軍事作戦を練るため? REUTERS

<相次ぐイラン側の攻撃は一線を越えない計算か、本格的な戦闘を誘う危険な兆候か。トランプはイラン攻撃を直前に中止した>

アメリカとの緊張が高まるなか、イランは6月20日、米軍のドローン(無人偵察機)をホルムズ海峡上空で撃墜。その前日には、イランの支援するイエメンのシーア派武装勢力ホーシー派がサウジアラビアの淡水化施設を攻撃した。イランは故意にリスクを高めているかのようだ。

オマーン沖での相次ぐ石油タンカー攻撃、核合意の履行をさらに停止するとのイラン政府の警告、といった一連の流れに続く今回の攻撃によって、米イラン関係が完全な対立に向かう危険性が高まっている。

「イランは実に大きな間違いを犯した!」とトランプ米大統領は20日、ツイッターに投稿した。さらに翌日には、イランへの軍事攻撃を承認したが実行の10分前に中止を命じたと、ツイートで明らかにした。

イラン革命防衛隊による米軍ドローンの撃墜について、イラン側は同機がイラン領空を侵犯していたと主張。直ちに軍事対応する「レッドライン」に相当すると述べた。

これに対し米国防総省は、ドローンはイラン沿岸から30キロ以上離れた国際空域を飛行しており、残骸の捜索も公海上で行ったと発表。「イラン領空を侵犯していない米軍機に対するいわれのない攻撃」と糾弾した。

トランプ政権内のタカ派がこのままイラン開戦を推し進めるのではないかと、米議会内には懸念が広がっている。民主党議員の一部は20日、イランへいかなる戦闘行為に及ぶ際も、最終決定権を政権ではなく議会に与えるよう、国防権限法案の修正を上院で訴えた。

とはいえ、当のトランプ政権関係者とトランプ自身も、ここ数週間で攻撃姿勢を増すイランにどう対応すべきか、迷走している。国防長官への起用が決まっていたシャナハン長官代行が辞退を表明し、マーク・エスパーが新たに長官に指名される見込みとなるなど、長官ポストの不在と省内の混乱も、事態を悪化させている。

生命線の水施設を攻撃

ポンペオ国務長官に言わせれば、直ちにイランへの軍事攻撃に踏み切る最後の一線になるのは、米兵の殺害につながるような何らかの行動があった場合だ。今回、故意に無人機を狙ったのは、その一線を越えないようにというイランの計算上の行動に見えると、彼は指摘する。

一方、シカゴ大学のロバート・ペープ教授は、イランに撃墜されるほど接近してドローンを飛行させていたという事実そのものが、米軍がイランの攻撃能力について情報収集を進めていたことを物語っていると言う。つまり、米軍が「攻撃計画を更新している」ということだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

利上げの可能性、物価上昇継続なら「非常に高い」=日

ワールド

アングル:ホームレス化の危機にAIが救いの手、米自

ワールド

アングル:印総選挙、LGBTQ活動家は失望 同性婚

ワールド

北朝鮮、黄海でミサイル発射実験=KCNA
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ公式」とは?...順番に当てはめるだけで論理的な文章に

  • 3

    「韓国少子化のなぜ?」失業率2.7%、ジニ係数は0.32、経済状況が悪くないのに深刻さを増す背景

  • 4

    便利なキャッシュレス社会で、忘れられていること

  • 5

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 6

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離…

  • 7

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 8

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 9

    毎日どこで何してる? 首輪のカメラが記録した猫目…

  • 10

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像

  • 4

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 9

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 10

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中