最新記事

アメリカ外交

台湾の蔡英文総統NY到着 異例の長時間滞在はトランプによる支持表明?

2019年7月12日(金)09時44分

台湾の蔡英文総統が11日、カリブ海諸国への外遊の経由地として米国に到着した。出発前には、台湾の民主主義は絶対に守らねばならず、現在は「外国勢力」からの脅威にさらされていると、暗に中国を批判していた。 写真はマンハッタンのホテルに到着した蔡氏(2019年 ロイター/Carlo Allegri)

台湾の蔡英文総統が11日、カリブ海諸国への外遊の経由地として米国に到着した。出発前には、台湾の民主主義は絶対に守らねばならず、現在は「外国勢力」からの脅威にさらされていると、暗に中国を批判していた。

台湾を自国領土の一部とみなす中国政府は、米国に対して蔡氏が立ち寄るのを認めないよう求めており、反発を強めている。

蔡氏は米国でカリブ海諸国訪問前に2泊(ニューヨーク)と、訪問後の帰路に2泊(デンバー)する予定。同氏がマンハッタンのホテルに到着する直前には、ホテル入口で親中派と親台湾派の集団が激しく口論し、最終的に警察が割って入る事態も起きた。

今年3月にも蔡氏は米国を訪れたが、今回の滞在時間は通常の1泊程度に比べると異例の長い時間だ。専門家によると、これは安全保障や貿易問題で米中対立が続く中で、中国からの圧力が強まっている蔡氏をトランプ政権が支持すると強調するメッセージになるという。

一方で米国務省は、蔡氏の滞在は「私的かつ非公式」なものだとの立場を打ち出している。

蔡氏はニューヨークで、当地で生活している台湾の人たちや外交関係がある各国大使と面会する。

蔡氏は来年1月の総統選に向け、中国の脅威から台湾の民主主義を守るためには国際社会の支持が必要だと繰り返し訴えている。米国が台湾に設置した実務処理の窓口機関、米国在台協会の所長を2002─06年に努めたダグラス・パール氏は、蔡氏が対中政策として掲げている「警戒と自制」というスローガンを米政府が認めた結果が長時間滞在につながったとの見方を示した。

さらにパール氏は、トランプ政権はまだ台湾に対する伝統的な米国の政策を大きく転換する姿勢は示していないが、米中関係が悪化する中でそうした転換が起きてもおかしくないと付け加えた。

米政府は今週、中国の批判を受けながらも台湾への武器売却を承認している。

[ニューヨーク ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2019トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

202404300507issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年4月30日/5月7日号(4月23日発売)は「世界が愛した日本アニメ30」特集。ジブリのほか、『鬼滅の刃』『AKIRA』『ドラゴンボール』『千年女優』『君の名は。』……[PLUS]北米を席巻する日本マンガ

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ロイターネクスト:米第1四半期GDPは上方修正の可

ワールド

バイデン氏、半導体大手マイクロンへの補助金発表 最

ビジネス

米国株式市場=下落、予想下回るGDPが圧迫

ワールド

中国の対ロ支援、西側諸国との関係閉ざす=NATO事
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 3

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP非アイドル系の来日公演

  • 4

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 5

    未婚中高年男性の死亡率は、既婚男性の2.8倍も高い

  • 6

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 7

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    やっと本気を出した米英から追加支援でウクライナに…

  • 10

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこ…

  • 7

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 8

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 9

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中