最新記事

日韓関係

日本と韓国の和解をアメリカが望む訳

The US Needs Japan-South Korea Reconciliation

2019年7月2日(火)15時45分
アンドルー・インジュ・パク、エリオット・シルバーバーグ

いま必要なのは、経済成長の鈍化や人口の高齢化、中国経済への依存といった共通の問題の解決に向けて日韓が協調することではないか。韓国は17年に、アメリカ製の最新鋭ミサイル迎撃システムを配備すると決めたが、中国の経済的報復に抗し切れなかった。しかしその後の日韓両国は、徐々に中国への対抗姿勢を強めている。

財界・経済界の連携重視

そこで注目したいのが次世代通信規格の5G問題だ。韓国政府は中国製の機器を容認する姿勢を見せるが、米日韓の民間企業は結束して華為技術(ファーウェイ・テクノロジーズ)の排除網を築こうとしている。

昨年10月、韓国のサムスンは日本のNECと組んで5G関連技術の開発に取り組むと発表した。今年6月には米アドバンスト・マイクロ・デバイス(AMD)との提携も発表した。

アメリカはこの状況を生かすことができる。まずは日韓それぞれに共通の国内問題の解決に役立つ技術協力を促すことだ。韓国にも高齢化の危機が迫っている。高齢者医療や健康関連商品といったシルバー市場には無限の可能性がある。

急成長する新興国市場に打って出るのもいい。東南アジアに進出して経済を多様化させるという文在寅(ムン・ジェイン)大統領の「新南方政策」はなかなか野心的だ。とはいえ韓国政府の存在感は、まだ東南アジアでは薄い。

対してODA大国の日本は15年に、インド太平洋地域で道路や鉄道、橋梁、港湾などを整備する「質の高いインフラパートナーシップ」構想を打ち出している。しかし中国は技術面でも実力を付け、今やインフラ整備で日本の優位を脅かす。15年にはインドネシアの高速鉄道計画で、日本に競り勝って契約を獲得した。世界中に中国製品を広める国家戦略「中国製造2025」も健在で、再生可能エネルギーや人工知能(AI)の技術では日韓をリードしている。

ところがエネルギーやサイバーセキュリティーなどの重要インフラに対する安全保障上の脅威に関する韓国政府内の政策論議は、まだ十分に深まっていないようだ。民間の原子力産業に関する議論も、エネルギーの持続可能性より核不拡散の問題に偏り、戦略的に狭い。

一方、日本とアメリカは1973年の石油ショック以来、幅広くエネルギー安全保障に取り組んできた。両国は今、原油価格の変動に影響されやすいインド太平洋地域諸国のエネルギー確保を支援している。

例えば日米戦略エネルギーパートナーシップ(JUSEP)は、アメリカのアジア・エッジ(エネルギーを通じたアジアの開発と成長の促進)構想と日本政府による各国のエネルギー産業に対する100億ドル規模の支援を連携させる試みだ。

JUSEPは既にインドとスリランカで液化天然ガスや再生可能エネルギーの供給を支援し、インド太平洋地域のさまざまな軍事的・商業的な要所を支配しようとする中国の「真珠の首飾り」戦略に対抗している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米エリオット、住友商事に数百億円規模の出資=BBG

ワールド

米上院議員、イスラエルの国際法順守「疑問」

ワールド

フィリピン、南シナ海巡る合意否定 「中国のプロパガ

ビジネス

中国、日本の輸出規制案は通常貿易に悪影響 「企業の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われた、史上初の「ドッグファイト」動画を米軍が公開

  • 4

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 5

    目の前の子の「お尻」に...! 真剣なバレエの練習中…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    美女モデルの人魚姫風「貝殻ドレス」、お腹の部分に…

  • 10

    ロシア軍「Mi8ヘリコプター」にウクライナ軍HIMARSが…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 8

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 9

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 10

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中